経理担当者が退職する本当の理由とは?突然の退職リスクへの対策方法もご紹介

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経理とは「経営管理」の略称であり、人材・資金・資材・情報を管理する必要不可欠な役割を担っています。経理担当者の退職は、所属している会社及び組織への影響が非常に大きいと言えるでしょう。また、企業規模によっては経理のみならず、人事や労務、総務などを経理担当者が兼務する場合もあります。責任ある業務を大量にこなしていることから、仕事に対する悩みや不満を抱える方も少なくなく、結果として「退職」を選択される方も。

経理担当者が退職する「本当の理由」とはいったい何でしょうか。突然の退職にも対処できる退職リスクへの対策と合わせて、ご紹介していきます。

1.経理担当者の退職による企業側のリスク

経理部門は、企業のなかでも少人数になりやすい部門です。なかには一人で複数業務をおこなっている担当者や、専門領域に特化した担当者が在籍する場合もあり、各人の責任範囲は広く、退職時のリスクは高くなりがちです。

一人経理や専門領域の業務を担っていた担当者が突然退職すれば、後任の方への引き継ぎは難航してしまいます。業務の進め方、関連情報の所在やコミュニケーション方法などが不明瞭であれば、業務の遅延やストップは免れません。経理担当者の退職は、企業にとって重大なリスクといえるでしょう。まずは、退職によって企業が実際に受けるリスクを紹介していきます。

1-1.経理業務がストップ・遅延してしまう

担当者が退職してしまう最大のリスクは、本来おこなうべき業務が実施されないことです。また、後任の方が業務を引き継いだ場合、業務の詳細がわからずに対応が遅れてしまう場合もあるでしょう。経理業務のストップや遅延は、たとえば、請求書発行・支払処理が十分におこなわれない、月次決算が遅れる、といったことを引き起こします。社外向けの業務が滞ると企業に対する信頼を失うことにも繋がり、企業へのイメージ悪化や、社外との取引に影響することもあるでしょう。失った信頼を回復させるには時間がかかります。

加えて、業務をフォローする同じ部署のメンバーにとっては、仕事量、残業時間が増え、モチベーションが低下する場合もあります。対策を打たなければ、他の担当者の退職リスクも高くなってしまいます。

1-2.経理業務のブラックボックス化

業務内容が明文化されず、特定の担当者しか把握していないケースがあります。いわゆる経理業務の「ブラックボックス化」です。ブラックボックス化された業務は、担当者が退職してしまうと、どこから手をつけていいのかわかりません。また、わからないまま業務を実行してしまうと想定外のトラブルを引き起こす恐れがあります。

このように前任者の業務内容が不明瞭な場合、ゼロから業務内容を整理するなどの追加対応が発生し、後任の担当者の業務負担がさらに増えることにも繋がってしまいます。

1-3.後任者の採用が難航する

経理人材は専門的なスキルが必要な職種であり、労働市場においてもなかなか現れず、採用が難しいと言われています。退職後に経理人材を採用しようと思っても「自社に合う方がなかなかいない」「必要なスキル水準に達していない」と苦労する企業も少なくありません。

企業によっては経験者でなく経理初心者を採用し、社内で育成するケースもあります。ただしその場合も、一人で業務を遂行できるようになるまでには時間がかかりますし、育成側も本来の業務と並行しておこなうため、どうしても時間を取られてしまいます。

1-4.業務の引き継ぎ不足

経理業務は1ヶ月単位でおこなわれる業務だけではなく、1年単位の業務もあるため、引継ぎが難しい側面があります。退職までの期間が3ヶ月から半年ほどあれば少しずつ引継ぎを進めていくことができますが、2週間から1ヶ月ほどで退職してしまう場合も少なくありません。

突然の退職の場合は引継ぎが非常に難しく、さらに経理人員が少数であれば業務が属人化している可能性もあり、引き継ぎ不足に陥るリスクが高まります。

2.経理担当者が退職する本当の理由とは

経理担当者が退職する原因とはどういったものが挙げられるでしょうか。本人が話す理由はさまざま。前向きな理由もあればネガティブなものもあります。退職者が同僚や上司に、本音で退職理由を伝えているかはわからないところです。ここでは、本当の退職理由を探っていきましょう。

2-1.人間関係に対する不満

仕事の種類を問わず、退職理由で非常に多いのは人間関係に対する不満です。経理部門は企業のなかでも特定の担当者のみと業務をおこなうことが多く、人の入れ替わりがほとんどありません。良好な人間関係であれば問題ありませんが、一部の人に苦手感情を抱いた場合、解決が難しくストレスを抱えがちです。

特に経理業務は役職に関係なく、経験が長く、実績が豊富な方に責任ある業務を任せている場合があります。上司と部下ではない独特な上下関係で悩むことも珍しくありません。そういったこともあり「退職」という意向になってしまうことも考えられるでしょう。また、少人数であるがゆえに不満を抱え込むことも多く、「直属の上司と馬が合わない」「経営者からの要求に応えられそうにない」などが退職理由となることもります。

2-2.スキルアップや資格勉強のため

経理業務は担当範囲を明確化しやすく、毎月同じ業務を繰り返すルーティン業務が多いことが特徴です。業務に慣れてくると自分のスキルアップや資格取得などの目標を持つことは当然のことですが、同じ業務の繰り返しだけでは十分ではありません。会社の規模・フェーズ・事業内容によっておこなう業務の幅にも違いがあります。中小企業の経理をされていた方が、上場企業や大企業で業務をしたいと転職を希望する場合もあるでしょう。

また、経理やその周辺領域は専門知識が必要なため、資格や検定の取得のために一定の時間を必要とします。そのため、退職してから税理士や公認会計士の資格取得の勉強をされる方も少なくありません。

2-3.評価や激務への不満

経理業務は成果が目に見えにくく業務が多くなりがちで、「忙しいわりに十分な評価をされない」と感じる方もいます。経営者からの要求を無理難題と感じながらも、担当者が努力を重ねて進めた結果「できて当たり前」とされてしまう。高い評価を得られず、結果として業務量が増えてしまい、オーバーワークとなってしまうことも。

また、ルーチン業務に取り組むことが得意な経理担当者の場合、イレギュラー業務自体がプレッシャーになることもあります(しかし頼まれたら断れない、という方が多いのも特徴です)。経理業務は限られた人員で個々の業務をこなしていくことが多いため、業務量が急激に増えると残業時間も増えていきます。その割には待遇が上がりにくいのも不満のひとつです。

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2-4.ジョブローテーションの機会がない

経理担当者はジョブローテーションの機会がほとんどありません。ジョブローテーションとは人材育成計画に基づいて、さまざまな業務を経験し、能力開発を行うことが目的の人事異動のことです。経理業務は専門的な知識を要するため、他の部署へ異動するのは難しく、ほかの部署からの異動も難しいと言えるでしょう。

また、企業内で上場準備などの大型プロジェクトに携わったとしても、終了後に同じ部門に戻るということをせず、役目を終えたと感じ退職してしまうこともあります。

2-5.産休・育休・介護・転勤などの家庭事情

色々な家庭事情で退職、転勤、休業する人もいます。産前産後休暇、育児休暇、介護休暇、家族の転勤等も(すべて退職につながるわけではないですが)その一つです。担当者がコントロールできないことが多く、「本当は継続して働きたいのだけれど・・・。」と感じながらも退職する方も少なくありません。

なお、企業側にとっては、産育休の場合は休業前に少し猶予があるため、引継ぎを十分におこなうことができます。しかし人員増加やアウトソーシング、効率化などの施策をふまない場合、引き継ぎ先の担当者への負担は大きくなってしまうでしょう。また、介護や転勤による休職・退職は急な場合が多く、引継ぎや後任探しに必要な時間を確保できていないこともあるので、注意が必要です。

3.経理担当者の突然の退職リスクへの対策方法

ここまでは退職の理由とリスクを紹介してきました。突然の退職にはリスクが伴うものですが、企業としてあらかじめ対策しておくことで回避できる部分もあります。ここからは突然の退職リスクへの対策方法をご紹介していきます。自社で活用できるか、ぜひ参考になさってください。

3-1.業務内容をマニュアル化する

経理担当者の突然の退職が起きると、他の担当者が業務を引き継ぐことになります。業務負担が大きくなり、ミスやトラブルに繋がる場合も。また、問題が起きた時に対処できなかったり、非効率な仕事の進め方をしたり、後任者がなかなか業務を覚えられない、といったリスクもあります。

対策として、普段の経理業務についてマニュアル化しておくことが有効です。マニュアルがあれば、業務手順がクリアになることはもちろん、問題が起きた時の対処法が明確になり、誰が担当してもほぼ同じように経理業務を進められます。また、後任者の指導時間の短縮にも寄与します。一人経理や属人化が進んだ経理担当者の場合は、マニュアル化する動機が湧かない場合もあるでしょう。その際は直属の上司からしっかりと働きかけるか、意図的に経理チーム内でメンバー入れ替えをおこない、マニュアル化せざるを得ない環境を作るなどが有効です。

3-2.クラウド・デジタル化を推進する

経理業務のほとんどはデジタル化が可能です。経理業務を手作業や紙ベースでおこなっている場合は、非常に時間がかかり、ミスの可能性も高まります。デジタル化をすると業務スピードがあがることはもちろん、無駄な業務工程を省くことも可能です。また、紙ベースで行っている請求業務などは、電子帳簿保存法などの法改正により、紙から電子への移行が進んでいます。また、会計システムや銀行のオンラインバンクなどを導入すれば、業務の自動化、効率化が可能です。会計システムは、仕訳はもちろん請求書発行や受取請求書の処理、周辺領域の販売管理や勤怠管理など、様々なツールがあります。

このようなクラウド型のシステムは場所を問わず業務をおこなうことができ、経理担当者間で共同作業や業務分担をスムーズに進められます。業務の分担や見える化は「ブラックボックス化」を防いだり、ミスを抑制することにもつながるでしょう。急な退職で引き継ぎができなくても、デジタル化やクラウドシステムの利用で業務内容が共有されていれば、業務遅延のリスクを大幅に回避することができます。

3-3.経理業務をアウトソーシングする

退職リスクを回避するために、経理業務を外部に委託する、いわゆるアウトソーシングという方法もあります。アウトソーシングサービスを提供する業者は経理業務の専門家のため、引継ぎやマニュアルを作成しなくても、業務を委託することができます。

経理業務の委託先としては「税理士事務所」「オンライン型の経理アウトソーシング会社」「センター型の経理アウトソーシング会社」が一般的です。委託する業務内容によって、料金は異なります。費用はかかりますが、採用費や後任者の人材教育の時間を代替できたと考えれば、企業にとってはアウトソーシングを利用したほうが有効な場合も多いでしょう。

4.退職リスクに備えて経理をアウトソーシングするメリット

退職リスクに備え、マニュアルを作成したり、デジタル化を推進したりといった対策を実行するには時間が必要です。そこで有効なのが「経理のアウトソーシング」。経理アウトソーシングとは、前述のとおり業務の一部やすべてを外部の業者などに委託することです。普段から経理をアウトソーシングすることで業務が安定し、退職時の業務負担や人材不足が理由となる退職リスクを軽減することができます。ここでは、経理をアウトソーシングするメリットを詳しく見ていきましょう。

4-1.経理業務のストップ・遅延に怯えなくて良い

経理アウトソーシングをおこなう委託先の多くには、経理知識が豊富で、業務内容を熟知している人材が在籍しています。突然の退職があっても、経理アウトソーシング会社に追加で依頼をおこなえば、業務がストップするリスクを軽減できるでしょう。また、退職者以外の一部の担当者だけに業務を引き継いでもらう必要もなくなります。

退職時の対応が比較的スムーズになることはもちろん、退職者の業務内容を引き継いだ別の担当者が負担のあまり退職してしまう、といったリスクも回避できます。

4-2.後任者の教育・採用や引き継ぎの負担が軽減できる

退職をきっかけに後任者の人材を採用しようとすれば、採用費・人件費がかかります。また、求人の作成、採用媒体への掲載依頼、書類選考や面接等をおこなうことで、担当者の負担が増すこともしばしば。本来の業務の最中に後任者を採用することは、費用面や業務面で負担が大きいと言えるでしょう。また、採用後もすぐに戦力になるわけではありません。後任者の教育や業務の引き継ぎをおこなわなければならず、独り立ちまでは育成側に労力がかかります。

経理アウトソーシングを進めれば、後任者を焦って採用する必要はありません。アウトソーシング会社は専門知識を有した経理のプロであり、人材育成のノウハウも豊富です。スピーディな立ち上がりを実現し、育成側の工数負担を大いに減らすことができるでしょう。

4-3.経理業務の属人化を防げる

経理は間接部門とも言われ、営業や開発といった直接部門よりも比較的少ない人数で構成されています。特定の業務についての進め方を担当者のみ把握していることも珍しくありません。そういった背景から、業務の属人化が進みやすい部門と言えるでしょう。各個人で完結する業務が多く、退職後にはじめて業務の内容が明らかになり、大きな問題を引き起こしてしまうこともあります。

経理をアウトソーシングすると、業務が見える化され、経理業務の属人化を防ぐことに繋がります。退職によるリスクを回避する大きなメリットと言えるでしょう。

経理アウトソーシングとは?外注するメリット・デメリットを解説

経理の退職リスクへの対策ならメリービズにご相談ください

経理は企業を裏から支える仕事であり、その業務内容は多岐にわたります。責任のある仕事であり、専門知識・ノウハウが必要な、なくてはならない存在です。デジタル・クラウド化による効率化が注目を浴びがちですが、企業としては働く方の退職リスクについても合わせて考えたいものです。

退職リスクに備えるには、経理アウトソーシングがおすすめです。ほとんどの経理業務を委託することができ、安定した業務遂行が実現します。不正防止対策法改正対応も依頼可能です。

経理の退職リスクへの対策であれば、ぜひメリービズにご相談ください。メリービズでは、ご依頼に合わせて柔軟に経理業務をアウトソーシングします。業務改善やクラウド会計導入、といったコンサルティング支援も可能です。マニュアルがない場合や、すぐに依頼したい場合でも、迅速かつ柔軟に対応しますので、お気軽にお問い合わせください。

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