経理プラスサミット講師に聞く「今」の経理の課題とは?DXを推進するために意識すべきは「人」

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国内外の影響により、企業の「働き方」は大きく変化し続けています。
企業の根幹を支える経理部でも、働き方に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
日々の業務効率化を求められるだけではなく、環境変化に対応するためのDX推進が急務となっている企業も増えています。
2022年7月23日に開催される「経理プラスサミット2022」において、そのような環境変化に対応し、一歩先の経理の働き方を実現するためのポイントを徹底解説します。
登壇に先立ち、経理プラス編集部より登壇者インタビューを実施いただきましたので、その内容をご紹介します。

登壇者プロフィール
メリービズ株式会社
代表取締役 山室 佑太郎
1991年生まれ、長崎県長崎市出身。東京理科大学専門職大学院イノベーション研究科在学中より、エムスリー株式会社にて製薬会社へのマーケティング支援に従事。その後、総合系コンサルティングファームを経て、2015年メリービズ株式会社へ参画。経理/会計業務のオンラインアウトソーシングサービス『バーチャル経理アシスタント』の立ち上げを担当。2016年10月より同取締役に就任。COOとして、事業戦略の立案推進などに従事。2022年2月より代表取締役に就任。

経理のDX課題は「全体像の把握」と「属人化」

──まずはじめに、これまでのご経験について教えてください。そのなかで大切にされていることがあれば、そちらも合わせてお聞かせください。

山室:これまで、スタートアップ・ベンチャーからレガシー企業、上場企業など、累計約850社へ経理アウトソーシングサービスを提供してきました。
さまざまな規模・業種の企業を支援してきましたが、そのなかでいつも大切にしていることは、お客様お一人おひとりとしっかり向き合うということ。経理担当者さまや経営者さま・管理者さまが「どのようなことで困っているのか」「どうしたらその課題を解決できるのか」を一緒に整理し、寄り添いながら支援しています。お客様と伴走しながら業務を支援させていただくイメージですね。せっかく業務を支援させていただくなら、担当者さまには「悩みが解決して働きやすくなった」と実感してほしいですし、経営者さま・管理者さまには「理想とする組織に一歩近づいた」と思ってほしいじゃないですか。そのように業務支援を通して多くの企業と向き合ってきたなかで、なぜ今そのような支援を必要としているのか、背景もふくめて理解した上でサポートを行わなければ、そもそもそのプロジェクト自体が上手くいかないということを実感しました。
最近では、日々の経理業務の代行はもちろん、経理DXに向けたクラウド会計システム導入や最適な業務フローの設計、上場企業の連結決算対応や未上場企業のIPO準備など、お客様との信頼関係が築けたからこそご相談いただける領域の業務も増えてきました。

──多くの企業の経理業務をサポートしてきた山室様から見て、「今」経理に生じている課題は何だとお考えでしょうか。

山室:業務効率化を検討するにあたって、結局何から手を付ければ良いのか分からない、世の中で起きているDXの流れをしっかりと感じ取ってはいるが、細部までは把握できていないという方が多いことだと思います。

──確かに、DXという言葉が一人歩きしてしまっている感覚はありますね。

山室:そうですよね。DXという言葉がここまで世の中に浸透する前でも、情報収集をこまめにしていた方など、以前から経理業務の効率化に取り組まれていた方もいらっしゃいます。しかし、DXという言葉が世の中に広く浸透したことによって、その言葉だけが先行し、「取り入れた方が良さそうな試みだとは認識しているが、具体的に何をすればよいのかが分からない」という方も多いのではと思います。

──経理業務の改善を検討する時に課題となることはありますか。

山室:私は大きく2つの課題に分けられると思っています。

1つは、お客様自身が、経理の全体像を把握できていない場合があること。
もう1つは、何が理想の状態であるか分からないことです。
そもそも、経理担当者さまの目線で考えると、自分たちの部署全体として誰がいつ何を行っているのかを完全に理解できている方は、実はあまり多くないのではと思います。もちろん、みなさんざっくりの全体像を理解したうえでご自身の担当業務を進めていると思いますが、常に経理業務にかかることすべてを細部に至るまで理解しているかというと、なかなか難しい状況なのでは思います。

──確かに、経理プラス会員の方からも「自分の業務は他の人に理解してもらえない」という話をよく伺いますね。経理は業務が属人化しがちとよく伺いますが、具体的にはどのような業務で発生しやすいのでしょうか。

山室:経理は業務の性質上、機密情報を扱うことが多いため、さまざまな業務領域において属人化が発生しやすくなります。特に、給与関連領域や勤怠管理などの労務領域は、経理が担当する業務の中でも担当者が抱え込みがちな領域かと思います。たとえ同じ業務を担当する経理メンバーが複数人いたとしても、個々の扱う情報の機密性が高く、他の部署はもちろん、同じ経理部内でも担当する業務領域が異なる経理メンバーに業務の相談ができない。その結果、特定の業務領域を担当するチームだけが、チームごと陸の孤島化してしまうこともよくあります。

──「自分が抜けたら経理部門が成り立たなくなってしまう」という声もよく伺いますが、そうすると経理担当者の負担は相当なものになりますよね。

山室:そうなんです。そのような状況になってしまうと、気づけば担当者の責任が相当重くなってしまい、業務内容的にも精神的にも負荷が大きくなってしまいます。特に、従業員数の少ない企業などでは、バックオフィス部門に多くの人員を確保することができないケースも多く、一人経理が生まれがちです。一人経理とは、その言葉の通り、一人しか経理担当者がいないということ。経理業務について相談できる人が社内にいない状況のなかで、その経理担当者の精神的負担を軽減することはもちろん、業務の属人化を解消して再現性のある業務体制を築くことは、その経理担当者が一人で抱えるべき課題ではなく、会社として解決していくべき課題であるはずです。

──それを助けてくださるのが『バーチャル経理アシスタント』ということでしょうか。

山室:そうですね。私たちメリービズが提供しているサービスは、一人経理の環境に経理がもう一人いるような状況を作り、ノンコア業務の属人化を解消することで、担当者さまが「コア業務」に集中できる環境づくりを支援しています。また、経理業務について相談できるパートナーとして、生産性の高い経理組織の体制づくりにも伴走します。

経理の業務改善プロセス

──貴社に「業務フローや経理組織の体制を変えたい」と相談される方は、どのようなことをきっかけに経理アウトソーシングを考えるのでしょうか。

山室:きっかけは企業ごとに様々ですね。たとえば「経理担当者が辞めてしまった」と急ぎのご相談をいただく場合もありますし、「IPO後の決算報告のために体制を変えたい」など未来を見据えてご相談をいただく場合もあります。しかし、各社さまから具体的に詳しくお話を伺ってみると、ご相談をいただいた当初に伺った課題感と、実際に現場が抱えている課題感が異なっていた、というケースも多いです。今どのような問題が生じているのか、問題が生じている背景も含めて、正しく状況を理解せずに業務改善を進めようとしてしまうと、根本的な課題解決ができなくなってしまうことも考えられます。そのため、まずは業務全体を見て、そのうえで課題解決に向けたソリューションを提案していく必要があります。

──企業規模によって必要な改善は異なるのでしょうか。

山室:企業規模はもちろん、企業が抱えている課題によっても変わります。私たちは大きく「提供価値×企業属性」の9マスに分けて考えることが多いです。
提供価値は、アドバイザリー、システム改善・導入、見える化(As is To be)
企業属性は、スタートアップ・ベンチャー企業、中小・レガシー企業、大企業
に分類しています。

スタートアップ・ベンチャー企業 中小・レガシー企業 大企業
アドバイザリー
システム改善・導入
見える化
(As is To be)

──それぞれのマスごとに、具体的にはどのような相談があるのでしょうか。

山室:たとえば「スタートアップ・ベンチャー企業 × アドバイザリー」では、IPO支援を求められるケースが多いですね。ほかには「中小・レガシー企業 × 見える化」であれば、長年勤めていた経理担当者の定年退職に伴い属人化していた業務を標準化したい、などです。

──複数のマスにまたがるケースもあるのでしょうか。

山室:複数のマスにまたがるケースもよくありますね。ご相談時には「IPOを支援してほしい」「電子帳簿保存法に対応したい」など、業務の一部を切り取った形でお話しいただくことが多いのですが、突き詰めていくとその背景に別の課題があることも。さきほどお話しした内容と重複してしまうのですが、実際の業務の全体像と課題を正しく理解したうえで改善を進めなければ、業務効率化、DX推進の実現は難しいと思います。

DX推進で失敗する原因のひとつは「人」にフォーカスを当てられないこと

──DX推進がうまくいかない場合の特徴などはありますか。

山室:「人」を置き去りにして効率化を進めようとすると、結果的に失敗してしまう可能性が高いですね。さきほども「業務の全体把握が大切」と話しましたが、この全体把握の時に忘れてはいけないのが「組織・チームの整理」です。

──具体的には、どのように整理をしていくのが良いのでしょうか。

山室:まずは、そのプロジェクトのオーナーシップを持つ人は誰か、を明確にする必要があります。また、プロジェクトを進めていく際、実際に手を動かす人が誰なのかを把握することも重要です。
業務と人は結びついているため、たとえばDX推進プロジェクトのオーナーが、実際に手を動かす担当者の状況・課題感を正しく理解できていないまま「システムを入れさえすれば業務効率化できるだろう」とシステムを選定して導入を決めてしまった場合などは、結果として失敗してしまうケースも多いです。なぜ失敗してしまうのかというと、たとえば、社内にそのシステムのノウハウを持った人材がおらず導入コストが想定以上に掛かってしまったり、導入後も担当者がシステムをうまく運用できず結局その業務にかかるリソースを削減できなかったり。そのようなケースでは、システムを導入すること自体がDX推進のゴールになってしまい、DX推進プロジェクトで達成したかった「業務を効率化する」という本来の目的は達成できなくなってしまいます。

──システムの選定からはじめてしまう企業は多そうですね。

山室:どうしても「DXを進めよう」という言葉が先行すると、「良いシステムを探そう」という、システムありきの流れになりがちです。経理担当者の悩みの解決に向けた業務改善のみを切り取れば、それに対応したシステムを探すことは難しくありません。しかし、システム選定からはじめてしまった場合は「このシステムでは何ができるのか」という考え方に陥りやすくなってしまい、当初解決したかった悩みがシステムにより解消されるはずが、かえって運用コストが増えてもっと悩みが増えてしまった…という事態も招きかねません。今どのような課題があり、これからどのような状態に変えたいのか、まずは自分たちの「業務の棚卸」と「状況の整理」をしていただくのが一番大切だと思います。

──経理プラスの読者からも「業務をシステムに落とし込むのは大変」という声を伺います。

山室:おっしゃる通りで、さきほども話しましたが、システム先行で進めてしまった結果、結局業務の効率化を実現できなかったというのはよくある話です。特に業務が属人化してしまっている場合、システムを活用して誰でもその業務を行える状態にすることに苦労されるケースは多いです。

──実際にうまくいかなかったというお声もあるのでしょうか。

山室:最近の情勢を反映していると感じた事例として、システム先行で改善を検討された結果、想定した効果を得られなかったという企業さまはいらっしゃいました。経営層が「経費精算システム」や「会計システム」を導入すれば業務が楽になると考える一方、そのやり方に理解を示さない現場の経理担当者さま、というケースです。経営層がシステムを導入するように命じ、実際にシステム導入をしたものの、結局業務の対応時間は減らず、現場の業務フローにもなじまないため運用に乗らず、弊社にご相談いただいたという事例です。SaaS・ツールは、うまく使いこなすことができればとても有益なソリューションの一つです。ただ、各社ごとに業務フローは異なりますし、担当者の持っている経験・ノウハウなども異なりますよね。そのため、ツールを使う企業と、ツールを提供するSaaSベンダーの間には、どうしても壁があります。DXが浸透しはじめているからこそ、今後さらに、SaaSを扱うことに対する壁に直面する方も増えていくのでは、と思っています。もしそのような壁に直面した場合は、「システムを導入するだけでなく、担当者にも目を向ける必要がある」という点を思い出していただき、今どのような課題があり、これからどういう状態にしたいのか、本来の意味での「DX」を目指してほしいなと思います。

大切なのは経理で働く「人」

──経営者・管理者は担当者の何を重視すべきだと思いますか。

山室:担当者のキャリアプランを考えるべきだと思います。経理として専門性の高い業務を担当してもらっているが、その先のキャリアプランについては考えられていない、現在の担当業務とは異なる領域の業務はできない、というケースは実は多くあります。DX推進をする場合、それまで手作業で行っていた業務を自動化するところもあると思うのですが、たとえば、ある担当者がそれまで担当していた領域のすべてを自動化することができた場合、その担当者の今後の業務領域は当然変わりますよね。業務が変わるということは、仕事内容が変わるということです。業務と人はつながっているということを意識し、経営者・管理者は、担当者の業務内容の変化とその影響も考える必要があります。

──経理DXに失敗しないためには、「人」を大切にすることが一番重要になりますね。実際に業務設計のサポートを望まれる方は増えているのでしょうか。

山室:DX推進にあたり、業務の設計・導入・運用までのサポートを望まれる声は強くなっていますね。そのような声をうけて、弊社でも新たに脱紙・脱ハンコやシステムのクラウド化といったDXの基礎から、クラウドシステムの連携によるシームレスな業務構築、リアルタイムな経営モニタリングやIPO準備といった戦略経理の実現まで、DXを軸にした総合的な経理コンサルティングをご提供する『メリービズ経理DX』というサービスを始めました。

──バックオフィス部門の業務を改善したいが不安があるという方は、まずは一度外部の有識者に相談するのも有効な手ですね。

山室:そのような悩みを抱えている方は、ぜひ一度ご相談いただきたいですね。さまざまな規模・業種の企業さまと伴走させていただいていますが、利用されているシステムも当然それぞれ異なるため、多種多様なSaas・ツールを扱いながら業務代行を進めています。なかには、ご相談いただいた当初からうまくツールを運用していたケースもあれば、当初はうまく運用できておらず一緒に運用改善を進めたケースもあります。社内だけの情報では限界だと感じている方は、ぜひご相談いただきたいです。

経理プラスサミットにご参加されるみなさまへ

──最後に、経理プラスの読者に向けて一言お願いします。

山室:今、一人で悩んでいるのであれば、「情報に触れる機会を増やす」ことで次の一手・選択肢が増え、変化できるきっかけになります。チャンスがあれば自分から情報を取りに行く、そのような行動を起こしていただくことで、みなさまご自身にとっても、会社にとっても、今後よりよい働き方や体制づくりをしていくための大切な一歩になります。今回の経理プラスサミットは、手軽に情報を得ることができる良い機会になると思いますので、お時間が合う方は是非視聴してみてください。

──山室様、本日は貴重なお話をありがとうございました。7月23日の経理プラスサミットでは「一歩先の『経理の働き方』実現のために重視すべき3つのポイントとは?」と題し、そんな一歩先の「経理の働き方」実現のために大切なポイントを3つに絞り、徹底解説していただきます。この機会に是非ご参加ください。

 

経理プラスサミットの詳細はこちら

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