BPaaSとは?BPOとの違いや市場規模、導入メリット・事例を解説
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経理アウトソーシング会社を活用する企業が増える昨今、BPaaSと呼ばれるサービスが注目を集めています。BPaaSの導入により経理担当者の負担軽減や残業時間減少が実現し、人件費や間接コストの抑制につながるメリットは魅力的です。
本記事では、BPOやSaaSとの違いに触れつつ、BPaaSの市場規模や導入メリットなどを詳しく解説します。BPaaSの導入が向いている企業の特徴や導入事例もご紹介しますので、自社のDX推進を実現したい方はぜひ参考にしてください。
1.BPaaSとは何か
BPaaS(ビーパース/ビーパス)は「Business Process as a Service」の省略形で、特定の業務プロセスを外部企業に委託できるクラウドサービスを指します。
SaaSやITツールの活用により、効率の高い状態で業務提供を受けられるのが特徴です。
2.BPaaSの市場規模と拡大する背景
BPaaSは、今後も大きな成長が見込まれる分野の一つです。
市場調査コンサルティング会社「株式会社SDKI」の調査レポートによると、BPaaSは2024年〜2036年の間に年平均成長率約8%での成長が見込まれます。
2036年までに1,000億米ドルの市場規模になるとも予想されており、日本を含むアジア太平洋(APAC)では業務の自動化とAIの普及が市場規模の拡大に影響するでしょう。
BPaaSが拡大する背景として、以下の3点が挙げられます。
- 人材不足の深刻化
- SaaSの普及
- BPaaSの低価格帯サービスの提供開始
昨今は人材不足に悩む企業も多く、業務効率化を実現できるシステムが注目を集めています。SaaSの利用社数は増えているものの、一方でノウハウや人的リソースの不足により導入・活用できない企業もあるのが現状です。
BPaaSはSaaSなどの活用も含め、運用全般を外部委託できる点が市場拡大につながっているといえます。また近年の傾向として、中小企業も利用しやすい価格帯のサービスが増えている点も、BPaaSの市場拡大を後押しする要因となるでしょう。
参考:株式会社SDKI「サービスとしてのビジネスプロセス(BPAAS)市場調査レポート」
3.BPaaSとBPO・SaaSとの違い
BPOは「Business Process Outsourcing」の省略形で、業務プロセスの一部を外部委託して自社の業務負担削減を図るサービスのことです。
BPOは業務を外部委託するのみですが、BPaaSはクラウドサービスを活用し、データやノウハウを集約・蓄積できる点に違いがあります。
SaaSは「Software as a Service」の省略形で、インターネット経由で利用できるクラウドサービスそのものを指します。
つまり、BPOとSaaSを掛け合わせたものがBPaaSであり、クラウドサービスの活用によって業務効率化やDX推進を実現できるサービスといえるでしょう。
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4.BPaaSを活かせる主な業務
BPaaSは、日々のさまざまな業務に活用可能です。BPaaSが役立つ主な業務を、具体的な活用シーンや期待できる効果とともにご紹介します。
4-1.経理業務
BPaaSは、以下のような経理業務に活用できます。
- 帳票・仕訳入力
- 経費精算
- 請求書発行・受領
- 売掛・買掛管理
- 月次決算
- 給与計算など
企業の経理業務は煩雑で、法律改正や組織形態の多様化、コーポレート・ガバナンス体制の強化といった変化への対応が求められます。BPaaSの導入により、SaaSのみでは難しい条件分岐の多い業務や、非定型業務にも対応しやすくなるでしょう。
4-2.人事・採用業務
BPaaSは勤怠管理や人事評価などの人事業務、採用業務にも有用で、業務の大幅な負担軽減が見込めます。
特に人事業務は、社員データベースの連携・活用が求められる重要な部門です。たとえば人事評価制度を新しく設計するとき、経営コンサルティング会社に依頼する選択肢もありますが、コストや時間がかかることが懸念されます。
BPaaSであれば、専門のコンサルタントによって設計・構築されたクラウドシステムを提供してもらえます。運用のサポートも受けられるため、ノウハウの少ない企業でも安心して導入できるでしょう。
4-3.カスタマーサービス業務
BPaaSはコールセンターやヘルプデスク、チャットボットなどのカスタマーサービス業務にも活用できます。カスタマーサービス業務を自社で行う場合に課題となるのが、オペレーターの稼働や教育にかかる人件費です。また、設備の購入・管理にコストや手間がかかることも挙げられます。
BPaaSは接客の得意な人材が顧客とやり取りをするため、対応品質の向上が期待できます。場合によっては、IVR(自動音声応答機能)やチャットボットでの業務自動化が実現する可能性もあるでしょう。
結果として自社でのオペレーター採用や専用の設備が不要となり、各種コストの削減が見込めます。
4-4.販売業務
BPaaSは受注・出荷処理、顧客管理、仕入管理などの販売業務にも役立ちます。
販売プロセスの構築により、各種設定から運用までの販売業務全般を専門家に任せられます。顧客情報の誤入力などのヒューマンエラーを防ぎ、効率的に営業活動を行えるでしょう。
5.BPaaSを導入する3つのメリット
BPaaSの導入により、企業にはさまざまなメリットがあります。代表的な3つのメリットをご紹介しますので、導入を検討中の方はぜひ参考にしてください。
5-1.生産性向上につながる
まず挙げられるメリットは、業務をすべて外部委託できることによる生産性の向上です。
SaaSなどのシステムを自社で運用する場合は、従業員のITに関する知識やスキルが欠かせません。複数のサービスを運用する場合は、サービス間の互換性を確認する必要もあります。しかしBPaaSを活用すれば、社内にSaaSを使いこなせる人材がいなくとも、業務効率化につながります。業務を専門家が請け負うことにより、品質向上も期待できるでしょう。
5-2.データの一元管理ができる
BPaaSではクラウドシステムを使うことによって、データを一元管理できる点も強みです。
複数のソフトウェアを導入した場合、部署間の連携の難しさや検索のしにくさなどが懸念されますが、BPaaSを導入するといつでもデータを確認できます。データや業務のノウハウを蓄積すれば、社内の人材育成や環境整備を効率的に進められるでしょう。
5-3.コスト削減が期待できる
BPaaSは自社で独自のシステムを設計・開発する必要がないため、初期コストの削減を期待できるのもメリットです。
導入後は月額・年額費用が発生するサブスクリプション契約のサービスが多いですが、企業規模や利用人数に応じて金額は変わるので、料金体系をよく確認しましょう。
6.BPaaSを導入する際の注意点
BPaaSを導入する際は、以下の3点に注意が必要です。
- システムやアウトソーシングの知識・実績はあるか
- サポート体制が万全で柔軟な対応をしてもらえるか
- セキュリティ対策は万全か
まずは自社の抱える課題を洗い出し、委託したい業務内容を明確化した上で、最適な外部委託先を選定します。システムやアウトソーシングについて詳しい知識をもち、実績の豊富な会社に依頼するのが望ましいでしょう。
また、導入後のサポート体制もあらかじめ確認します。万が一トラブルが起こった際の対応や、責任範囲を明確にしておきましょう。
個人情報や機密情報の流出を防ぐためのセキュリティ対策も欠かせません。外部委託先のセキュリティ体制が十分かどうか、事前に精査しましょう。
7.BPaaSの導入が向いている企業の特徴
BPaaSは業務量に応じて料金を設定していることも多く、企業規模を問わず導入しやすいのが特徴です。その点を踏まえた上で、BPaaSの導入が向いている企業の特徴は以下のとおりです。
- 業務効率化に課題をもつ企業
- 人手不足に悩んでいる企業
- クラウド化・ペーパーレス化が進んでいない企業
- グローバル展開を目指す企業
まず挙げられるのは、紙やハンコでの対応が多く、業務効率化に課題をもつ企業です。
近年はIT化によるペーパーレスや押印廃止の動きが見られますが、システムの運用・管理にコストがかかる点、人的リソースやノウハウの不足などから導入に難航している企業もあるでしょう。BPaaSであればコストや人的リソースを抑えつつ、クラウドシステムと専門知識をもつ人材を活用して、業務効率化を図れます。
また、BPaaSはグローバル展開を目指す企業にもおすすめです。各国の法律や地域のルールに知見のある会社に外部委託すれば、グローバル展開をスムーズに進められます。現地の状況に合わせた独自の戦略アドバイスも期待できるでしょう。
8.BPaaS導入の事例
最後に、BPaaSの導入により自社の課題が解決できた2社の事例をご紹介します。
8-1.水戸部製缶株式会社
──100年以上の歴史を持つ貴社が、今、経理DXに着手したきっかけを教えてください。
長きにわたり専属で経理業務を担っていた担当者の退職をきっかけに、経理業務を継続することが難しくなってしまったのです。引き継ぎを行うにも、後任として入社した従業員が退職するなど組織としても不安定な状態で、数年の間に担当者が何度も入れ替わっていました。
──『メリービズ経理DX』導入前後で生じた変化を教えてください。
田村:紙の伝票がなくなったのは大きな変化です。振替伝票で毎月200枚ほどでしょうか。以前は、私が一つ一つ起票し、その伝票をシステムに入力する、といった形でタイムラグが生じており、リアルタイムで内容を確認できませんでした。しかし、それも今では即時に見ることが可能です。
また、当初の課題であった会計データの各PC端末からの閲覧が可能となり、手元ですぐに入力・確認ができるようになっています。各事業所の帳票・仕訳・補助簿のデータもGoogle Driveに集約されているので、月次決算の資料突合も迅速になりました。修正も容易ですね。試算表を作成する時間を短縮することにもつながっています。
100年続く老舗企業を突き動かしたのは「事業継続への不退転の決意」。クラウド会計導入でアナログ業務を脱却した水戸部製缶の経理DXプロジェクト – メリービズ経理DX
8-2.株式会社アーバンスペース
2019年にはグループ会社が4社になり、その後の拡大も見据える中で、経理チームを組織しなければならないと考えるようになったんです。
──採用に力を入れることに?
松山:もちろん、そういった選択肢も考えました。ただ、これまでのことや、遠隔地の拠点との協働というワークスタイルを考えたとき、外部のパートナーと手を組むのも一つの手なのではないかと思ったんです。そうして、経理業務をアウトソーシングできるパートナーを探し始め、出会ったのがメリービズさんでした。
──そうしてメリービズのサービスを導入してくださったのが、2019年の8月頃。導入当初の所感をお聞かせください。
松山:やっぱり「辞めない」ことが大きいですよね。先程お話したように、これまでは経理担当者が辞めてしまうことがあって、そのたびに新たな担当者の採用に動き、採用できたら引き継ぎのためのコストを割かなければならなかった。
溝井:引き継ぎや教育のコストがかからないことは、大きなメリットですよね。あとは、決算時期にメリービズさんのありがたみを強く感じました。決算時期って、通常業務に加えてさまざまな業務が発生しますよね。特に弊社の場合は、複数のグループ会社の決算も担当しなければならないので、細かな業務も含めて業務量がかなり増えるんです。
そんな決算期をこれまで問題なく乗り越えられているのは、メリービズさんの貢献が大きいですね。
クラウド会計導入でテレワークを実現、レガシーな業務プロセスを抜本改革! 退路を断って進めた経理DXがもたらす、バックオフィスの改善マインド。 – メリービズ経理DX
BPaaSについてまとめ
BPaaSはSaaSやITツールの活用によって業務効率化を図れる有効な手段であり、昨今の課題である人材不足解消や生産性向上が期待できます。また、業務フローやデータをクラウド経由で共有でき、社内で一元管理しつつノウハウを蓄積できるのもメリットです。
初期コストを抑えやすく、企業規模に応じた料金プランを提案するサービスが多いため、中小企業でも比較的導入しやすいといえます。自社の業務体制や人材不足に課題を抱えている企業様は、BPaaSの導入をぜひご検討ください。
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