経理BPOサービスとは?BPOの基礎知識から活用メリット・導入事例まで解説

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高まるDX需要、電子帳簿保存法やインボイス制度といった法改正、労働人口の減少など、経理部門を取り巻く外部環境が大きく変化するなか、経理課題の解決策のひとつとして経理BPOサービスが注目されています。本記事では経理BPOとは何か、活用するメリットや導入時に検討すべきポイントなどを紹介していきます。

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1.BPOとは

経理業界においてBPOは、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(Business Process Outsourcing)の略称を指すことが多いです。
BPOと似た用語にアウトソーシングがありますが、アウトソーシングは業務単位で委託することを想定するのに対し、BPOではビジネスプロセスを丸ごと委託するイメージが強く、「委託の範囲」が異なります。
例えば人事部の業務でBPOを活用すれば、社内に人事部を設ける必要がなくなるといったケースが考えられます。また、抜本的な課題解決を図り、業務プロセスの設計や再構築ごと、委託先に依頼する場合もあります。

1-1.BPOサービスの種類

BPOサービスは一般的に、大きく二つに区分できます。システム運用などの業務委託を請け負う「IT系」と、財務・経理、人事、調達・購買、カスタマーサポート、営業などを請け負う「非IT系」です。具体的に、IT系BPOは、データセンターやクラウドサービスを活用しシステムの運用を外部に委託する方法を指します。一方、非IT系のBPOサービスは、システム運用管理業務以外のビジネスプロセス全般を委託する方法を指します。

そのため、経理BPOサービスは種類上「非IT系」に分類されます。しかし最近では、「非IT系」区分とはいえITを活用しているケースも多いです。実際に経理BPOサービスでも、クラウド会計ツールを導入するなどITを活用するケースが多数存在します。

1-2.BPOサービスの市場規模

日本のBPOサービス市場は拡大を続けており、2021年度のBPOサービス全体(IT系BPOと非IT系BPOの合算値)の市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比3.0%増の4兆5,636億9,000万円と推計されています。リモートワークの普及に合わせて、働き方改革やDX推進などの業務変革に取り組む企業が増えていることがその背景と言われています。今後も少子化に伴う労働力不足を補う目的やコンプライアンス強化の観点から、BPOを導入する企業が増えていくと予想されています。

 

2.経理BPOサービスとは

2-1.経理BPOサービスの種類

経理業務を外部に委託する方法はいくつかあります。ここではその種類を大きく4つに分けて紹介します。委託を考えている業務の範囲や経理部門の体制に応じて適切な方法を検討しましょう。

2-1-1.オンライン経理代行

リモート環境で専属スタッフが経理業務を代行するタイプです。特定の業者あるいは個人に業務を委託し、やりとりはオンラインで行う方法が一般的です。新しく生産性の高い働き方が求められるなか、注目が高まっている方法のひとつです。
リモートでの代行に特化した経験・スキルを備えた人材が揃っており、比較的スタッフ数が多い傾向にあります。オンラインで経理業務を代行する体制が整っており、柔軟性が高いという点も特徴的です。リモートワークが浸透している会社であれば、委託先との打ち合わせのために出社する、といったことも起きず、活用しやすい方法といえるでしょう。
一方、ファイリングなどの紙を基点とした業務の遂行は困難です。また、アウトソーシングの中では比較的新しい形式であるため、他の委託手法と比較すると実績が少ない場合があります。十分な実績があるか・自社と同じような企業が導入しているかを確認することが重要です。

2-1-2.センター型BPO

一般的には「オフサイト型」と呼ばれ、発注者のオフィスに常駐せずに外部で業務を行うタイプです。地方や海外の拠点に常駐しているオペレーターが遠隔で実務を行います。
紙ベースの業務を含む、業務プロセスの全てを委託でき、スタッフの専門性や業務品質が担保されている傾向にあることが大きなメリットです。地方に拠点を移すことで災害時などの事業継続計画の取り組みにもつながります。
ただし、発注には一定規模以上の業務ボリュームが必要であるため、細かな業務の切り出しには不向きです。また、センターに一定数の人材を常に抱えていることから、建物や人件費などの固定費によりコストがかさみやすいことも特徴的です。

2-1-3.常駐型BPO

「オンサイト型」とも呼ばれ、専属スタッフが発注者のオフィスに常駐して実務を行うタイプです。
センター型BPOと同様に業務プロセスの全てを委託でき、スタッフの専門性や業務品質が担保されているのがメリットです。スタッフを自社オフィスに常駐させることができるため、機密情報を社外に持ち出す必要がなく情報漏洩のリスクを軽減できます。
一方で、オフィス内にスタッフ常駐のためのスペースを確保したり、業務のためのインフラを整備する手間がかかります。また、センター型BPOと同様、一部業務の切り出しにはあまり向いていないでしょう。

2-1-4.その他(税理士への委託など)

他には、顧問契約と併せて税理士や会計事務所に業務を依頼するタイプがあります。従業員数1名〜10名ほどの規模の企業からのニーズが高く、記帳代行を依頼するケースが多いです。
税務と窓口を一本化することができ、税務書類の作成など税務関連の相談・アウトソースも可能です。依頼相手は税務の専門家であるため、税務リスクを回避した体制が構築できることも魅力といえるでしょう。
一方、経理内部の業務である請求書や経費精算の対応、業務フロー改善やシステム導入などの相談には不向きです。事業拡大に応じて業務が遅延する傾向にあり、企業フェーズが変化するにつれ、税理士事務所へのアウトソースから他のアウトソーシング先へ変更するケースも珍しくありません。

2-2.経理BPOサービスの対応業務例

一口に経理業務といっても、実務の内容は多岐にわたります。BPOサービスを導入した場合、具体的にどのような業務を委託できるのか解説します。

2-2-1.伝票・仕訳入力

経理の基本業務とも言える伝票・仕訳入力は、ボリュームが増え、シンプルな取引が多くなるほど、外部委託の候補に挙がりやすい業務です。昨今ではシステムを活用した自動入力やデータ連携が増えてきたため、伝票入力のみのBPOは減少する傾向があります。

2-2-2.支払代行

取引先への支払情報の作成を委託します。内部統制の強化、安全上の線引から、データ作成までを委託し、実際の取引先への支払い・送金は自社で行うのが一般的です。

2-2-3.請求書作成・発送

販売データや納品データから請求書を作成し、発送まで行う業務もBPOに適しています。大量の請求書の発送は多くのBPO企業が取り組んできた業務です。一方、請求書の作成・発行業務は、PDFのように電子データ化し、メールやクラウドを介してやり取りする方法も大衆化が進んできました。また、電子帳簿保存法の改正などで、請求書等の各種帳票類の電子化が推奨されており、将来的に発送業務は減っていくことが予想されます。
現在は経理BPOサービスとして完結することが多いですが、今後はBPOサービスとシステム活用を組み合わせた手法が、一般的になるでしょう。

2-2-4.入金消込

取引先からの入金情報をもとに売掛金の消込を行う債権管理業務もBPOに適しています。定常的に債権管理を委託する方法もありますが、月末から月初など入金が集中して業務量過多になりやすい繁忙時期のみに、BPO事業者に依頼して業務量の平準化を図るという活用ケースもあります。

2-2-5.決算業務

上場企業では決算関連のスケジュールが四半期ごとに定められており、スケジュールがタイトに組まれていることも珍しくありません。特に連結決算が必要な企業の場合、経理担当者が少ない子会社の決算も間に合わせたり決算の早期化に対応したりするために、BPOを活用している企業も多いです。

3.経理BPOサービスを活用するメリット

企業が抱える課題によって、経理BPOサービスを導入するメリットは様々です。いくつか紹介していきます。

3-1.人件費や教育コストの削減

経理BPO事業者の人員は十分な業務経験を持つ経理のプロであり、高品質かつ効率的な業務が期待できます。業務効率化により業務量が減ることで、従来かかっていた人件費が削減できるほか、中長期的には採用コストや教育コストの削減も期待できます。新たな従業員が経理部に所属した場合、一から教育をしなければならず、実業務を行えるようになるまでには時間がかかります。BPOを導入すればすでに専門知識をもっている担当者が業務を行うため、担当者の教育にかかっていたコストの削減が可能です。

3-2.経理業務ブラックボックス化の解消

専門的な経理業務を外部委託することは、業務プロセスの可視化にもつながります。BPOを導入した後は、BPO事業者側で業務手順書の作成、業務フローのマニュアル化を行うことが一般的です。これにより、属人化していた業務の可視化に繋がります。また、ブラックボックス化しやすい経理業務に社内外からチェックが入るきっかけともなり、不正に対する牽制の効果もあります。

3-3.コア業務に集中する時間の確保

経理のノンコア業務を外部委託できれば、その分自社の人的リソースを割く必要がなくなります。これにより経理部の人員はコア業務に集中できるようになり、売上拡大への施策検討や予実管理の体制構築など「本来やるべきこと」にリソースを割けるようになります。

3-4.経理業務の品質向上

経理業務に精通した人材が自社の業務を担当するため、自社担当者と比べてケアレスミス、業務遅延の防止が期待できます。経理BPOの発注先は基本的に経理のプロであるため、安心して任せることができ、品質が保たれた成果物を得られるでしょう。また専門家に依頼することで法改正などの最新状況が得られ、常に最適な対応を取りやすくなります。

4.経理BPOサービスを選ぶ際のポイント

経理BPOサービスの導入にあたり、どのような項目に注意して委託先を選定するべきでしょうか。大きく3つのポイントでご紹介します。

4-1.業務品質(業務体制×人材×設計)

最も重要な指標の一つが、業務品質です。納期内に決められた業務をこなすことができても、提供される業務品質が悪ければ本末転倒。なおさら担当社員の負担が増えるということになりかねません。しかし提供される業務の質を導入前に見極めるのは難しいと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、業務品質を左右する3つのポイントをご紹介します。

業務品質は「業務体制」「人材」「設計」の3要素で決まると考えられます。

4-1-1.業務品質(人材)

スタッフのスキルや経験値、チームのノウハウが十分か。業務内容に適正のあるスタッフがアサインされることで、高品質な納品物・業務アウトプットを期待できます。業務を遂行する能力だけでなく、コミュニケーションスキルや提案力、業種・業界への理解も重要な指標です。保有スキルや人材の豊富さ(在籍スタッフ数)を参考にしてみましょう。個々のスタッフのレベルはもちろん、チームとして保有しているノウハウが豊富かどうかを見極めるために、導入実績も参考にすると良いでしょう。

4-1-1.業務品質(設計)

納期に合わせて求める納品物がきちんと提供される仕組みになっているか。いくら優秀なスタッフが在籍していても、そのリソースを活用するための業務設計をできる人材がいなければ品質は低下します。自社の業務フローや経理体制と親和性の高いオペレーションを組んでもらえるか、導入までのプロセスを把握しておくことをおすすめします。

4-2.サービスのカスタマイズ性

必要な時に必要な分だけの業務をアウトソースできる柔軟性があるかどうかも重要なポイントです。そもそも経理BPOは、自社のリソースを補填・拡充するためのものです。経理業務の全ての工数を代替したいのか、退職する担当者の分だけ調達すればよいのか、ある業務の一工程だけでよいのか、企業によって必要とするリソースは様々です。最適なコストで有効活用するため、必要な領域のみを代行してくれるサービスを探しましょう。業務領域だけでなく、会計ソフトや業務フローにも注意が必要です。既存の業務フローのまま変える必要がない部分は、そのまま進めてくれる委託先を探すことが、導入にかかる工数を抑えるためにも肝心です。導入時や導入後の社内負担を軽減するためにも、カスタマイズの自由度があるサービスを選ぶことが大切です。

4-3.実績・導入事例

導入企業の事例・実績も欠かせない指標です。導入社数が多ければそれだけユーザーから支持されているサービスということになり、安心して導入を決めることができるでしょう。案件数が豊富だからこそノウハウが充実していたり、どんな状況にもスムーズに対応してもらえたりなど、導入後の業務品質にも関わってくる観点です。
導入事例の中に自社と同じような事業フェーズ・規模・業界の企業があれば、BPOの活用方法を参考にすることができます。

4-4.その他

業務提供開始までのスピードは、求めるスピード感があるかを測る参考情報になります。契約から導入開始までどれくらいの日数がかかるのかや、問い合わせから打ち合わせまでの対応スピードが期待に応えるものであるかなどが評価基準になるでしょう。
また、経理業務は社内の機密情報を取り扱うため、セキュリティも欠かせない要素です。Pマークを取得しているか、PC貸与が可能かなど、自社の方針に適した企業を選びましょう。
ほかにも、経理BPOに限らずサービス導入の比較検討に欠かせない検討項目は費用です。他企業と比較した単純コストの他、採用コストやマネジメントコストの軽減等を踏まえた費用対効果を考えて比較しましょう。

5.経理BPOサービスの活用事例

ここまで汎用的なメリットや選定時のポイントを見てきました。最後に実際に経理BPOを委託するパートナーとして、弊社メリービズを選んでいただいた企業の活用事例を見てみましょう。

5-1.月間2万5,000件の明細への膨大な対応業務をBPOした事例

加工製品商社として日本の製造業を支える株式会社ISSリアライズ(旧社名:井上特殊鋼株式会社)の創業は1920年、100年の歴史を持つ老舗企業です。全国に拠点を持つ同社が月間で対応する請求書の枚数は2,000枚、明細の件数は2万5,000件にも及び、この膨大な請求書の処理を担当していたのは現場の事務スタッフでした。現在は仕入れに関する経理業務をメリービズに依頼しています。

導入にあたり、まずは作業手順のルール化を依頼し、営業所によってバラバラだった社内システムへの入力形式を明らかにし、作業の手順化、ルールの明確化を行いました。作業をオンラインで完結させるため、営業所にデスクやパソコンを用意するというコストもなく、必要となる営業日数分だけ仕事を依頼することになるので、常駐型のアウトソーサーよりもコストを抑えることに成功しました。

全営業所での稼働が始まって約1年が経過した現在では、現場から聞こえてくるのは「導入してよかった」という声ばかりとのことです。全営業所のメンバーがストレスを感じることなく、新たな業務フローでの仕事を進められ、リモートで作業ができる体制になっていたことで新型コロナウイルスの影響を最低限に抑えられたことも、現場のメンバーにとっては大きなメリットだったといいます。

創業100周年を迎えた老舗企業が「会社の歴史上、初めての試み」のパートナーにメリービズを選んだ理由

経理BPOサービスについてまとめ

経理BPOサービスの概要・メリット・導入検討時の選定基準・事例について紹介してきました。経理業務は法改正や働き方改革といった外部要因と、社内のスケジュールや人件費といった内部要因の両方に影響を受けながら毎月遂行されていきます。いずれの社内ニーズも満たしながら、より良い経理業務環境の実現が叶う経理BPOサービスを検討されることをおすすめします。

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