経理業務のデジタル化とは?推進の背景やメリット、方法・ツールを解説

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多くの領域で、経理業務をデジタル化していく動きが加速しています。
しかし経理業務に関しては、デジタル化を推進するのが難しいと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
複雑な経理業務をデジタル化するには、何から取り組んでいけばよいのか。本記事では、経理業務をデジタル化するために抑えておきたいポイントや、おすすめのツールをわかりやすく解説します。デジタル化を実現して、業務の効率化を目指しましょう。

1.経理業務のデジタル化とは?推進されている背景

経理業務におけるデジタル化とは、請求書や領収書の発行、仕訳登録、帳簿への記帳、給与計算などの経理業務を、従来の紙(書類)に頼らず、デジタルデータとして扱うことを指します。これにより、ペーパーレス化やクラウド活用によるデータ保全性の向上が実現できるだけでなく、コスト削減や業務の効率化が期待できます。デジタル化は近年国を挙げて取り組みがされている「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の影響もあり、業種・業界を問わず導入が急速に進んでいる状態です。

そこでまずは、経理業務でデジタル化が推進されている背景について改めて確認してみましょう。

1-1.テレワークの推進・働き方改革

デジタル化が促進されている背景には、「働き方改革」が挙げられます。2019年以降、働き方改革の関連法が進められており、労働人口の減少解消やワークライフバランスを意識した働き方に変えようとする取り組みが行われています。その中でも、テレワークによる業務効率化や長時間労働の削減が国内全体で推進されています。

こうした背景から、企業ではこれまでは紙をベースにしていた業務をデジタル化したり、ウェブ会議への切り替えといった工夫も求められるようになりました。ですが、経理業務に関しては、紙での伝票作成や請求書発行など紙中心に業務が回っていたため、従来のやり方では会社に出勤することが前提となり、テレワークの推進を勧め辛いことが課題でした。複雑な経理業務をデジタル化することで、経理担当者もテレワークがしやすくなり、より生産性も上がり、業務の効率化にも大きな効果が期待できます。

1-2.ペーパーレス化

紙を使わず、電子データのやり取りで業務を完結させる動きが進んでいます。
近年、SDGsへの取り組みが世界的に推奨され、大多数の企業が環境に配慮した活動を始めており、ペーパーレス化もその一つとして注目を浴びています。また、紙をベースとした業務では、情報がすぐに行き渡らなかったり、管理保管のためのコストがかかります。そのため、ペーパーレス化に前向きに取り組むべきであるという意見は多く、経理のデジタル化の背景になることも散見されます。

2.経理業務のデジタル化を阻害している課題

他の部署ではデジタル化が進んでいるにも関わらず、経理業務だけが従来の方法のまま業務にあたっている企業が多いのが現状です。

経理業務は長年企業内で培われてきたノウハウやシステムを利用して進めることが多いため、新しい方法に切り替えるのは難しい場合もあります。特に、アナログな方法に慣れているベテラン担当者にとって、IT技術を駆使した新しい方法を覚えるのは骨が折れることです。また、新しい方法を教えられるITリテラシーの高いメンバーが社内で不足している場合も、推進は難しいかもしれません。なかには、経理担当者が独自のルールやフォーマットを作成し、他のメンバーでは引き継げない状態になっているケースも観察されます。「属人化が進むなか、無理にデジタル化を推進しても非効率では?」との懸念から、業務フローの改善を望まない方もいる可能性もあります。

デジタル化を推進するには新規システムやツールの導入は非常に有効ですが、関係者の意識も重要です。まずは現場から経営層までデジタル化のメリットの認識を合わせ、進めていくことが大切になります。

3.経理業務のデジタル化によるメリット

経理業務をデジタル化できると、経理担当者の負担が軽減するだけでなく、社内全体にも多くのメリットをもたらします。ここではその一例をご紹介します。

3-1.業務効率化

専門の会計システムやツールを導入してデジタル化を進めることで、多くの業務を自動化することができます。例えば、取引先へ発行する請求書や領収書の発行・記帳業務などが代表的です。
会計ソフト・ツール上で必要な数値やデータを入力すると、請求書の発行や送信まで自動で行われるため、担当者の業務負担の軽減につながります。また、一連のやり取りが終了した後の書類保管もデジタル化すれば、従来のように請求書を都度印刷して所定のファイルに保管するといった付随業務も減らせて、業務を効率化できます。書類の保管や確認作業といったノンコア業務が減ることで、経理担当者が本来やるべきコア業務に時間を割けるようになるでしょう。

3-2.コスト削減

紙ベースでの業務にかかっていたコストを減らせる点も、デジタル化の大きな魅力です。
紙で書類を保管すると、例えば以下のような費用がかかります。

・印刷用紙代
・インク代
・コピー機や周辺機器の導入費用
・コピー機のメンテナンス費用
・書類の郵送費用
・書類保管のためのファイル代など雑費
・廃棄処分費用
・書類送付の際の切手や印紙代

保管する書類が膨大な企業では、保管用のスペースを別で借りている場合や外注先へ管理を委託していることもあるでしょう。業務をデジタルにするだけでコスト削減につながります。

3-3.属人化リスクの回避・人的なミスや不正防止

デジタル化によって、経理業務の「属人化」を改善することも可能です。

経理は専門的な知識が必要なことも多く、業務量に対して担当者の人数が少ないことから属人化しやすい業務といえます。特定の経理業務が一部の担当者のみに任されている場合、担当者が不在になると業務が滞るだけではなく、急な退職や休職により担当者が不在になっても同じ水準で業務を遂行できる担当者が見つからず、経理全体の業務が圧迫されてしまうこともあるでしょう。
また、アナログな環境で業務を進めていると計算や入力ミス・転記漏れといった人的ミスにも繋がります。経理業務をデジタル化すれば、担当者が不在でも業務をスムーズに行うことができ、会計ソフトの自動計算や入力で人的なミスを防ぐこともできます。第三者によって書類を改ざんされるといったリスクも回避できます。

経理業務の属人化について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。


4.経理業務のデジタル化を進める具体的な方法

具体的に、経理業務をデジタル化していくためには何から始めるべきでしょうか。一般的には、以下のステップで進めていくケースが多いとされています。

1.現在の課題を明確にして、社内の改善すべき項目に優先順位を決める
2.業務フローを見直す
3.具体的にどの業務をデジタル化するか検討する

上記のステップを踏まえたうえで、デジタル化のためにやるべきことを具体的に解説します。

4-1.経理関連書類のペーパーレス化

デジタル化の推進にあたって経理業務のペーパーレス化を優先的に進める企業も多いです。例えば、以下のような業務は比較的電子化しやすいと言われています。

・経費精算などの各種申請業務
・社内会議の資料
・契約書や請求書など

まずは経理関連業務からペーパーレス化を進めることで、担当者や対象の従業員が不在でも、自宅や外出先からデータを確認して承認までできるよう、オンラインでフローが完結する仕組みが導入可能になります。
社内書類の電子化ができたら、取引先との書類の管理方法を交渉し、会社全体のペーパーレス化を進めていきましょう。見積書や請求書といった書類をデータ取引に移行できれば、他社との取引もオンライン上で完結するようになり、コストの削減や効率化にも繋がります。

4-2.業務の自動化・効率化

デジタル化をさらに進めるには、経理業務の自動化や効率化も重要です。
例えば、AIによる業務補助やOCRによる読み取り機能を活用することで、従来紙で処理をしていた伝票データ入力や計算処理、勘定科目などの振り分けを半自動化することができます。また、クラウド会計ソフトを導入し、会計ツールと連携させれば経理業務全体の効率化を図るだけではなく、属人化した業務における人的ミスを防ぐことも可能となります。

4-3.デジタル化のためのツール導入

デジタル化を効率的に進めるためには、課題に合ったツールの導入が不可欠です。ツールには多くの種類があり、どのツールが適しているかは導入目的や自社が抱える課題感によって異なります。
同じ請求書管理ツール1つをとってもサービス提供会社によって、OCR機能がついているものや、自動仕訳のみに特化したものもあります。そのため、必要な機能をよく見極めて、社内の業務との親和性もチェックしながら導入することが大切です。

5.経理業務のデジタル化に活用できるツール

最後に、経理業務のデジタル化に役立つ専門ツールをご紹介します。
これまでで把握した課題やニーズを踏まえて、最適なツールを選定できるよう、機能や特徴を把握しましょう。

5-1.クラウド会計ソフト

クラウド会計ソフトは、インターネットを通じ、クラウド上で利用できる会計ソフトのことです。従来のオンプレミス型と違い、他サービスとの連携が比較的簡単なことが特徴です。
たとえば、経費精算ソフトと連携させて自動で会計ソフトへ流し込むことができる場合もあります。
また、クラウド上にデータが保存されるため、テレワーク環境でも業務を遂行できる他、担当者が不在でも情報が可視化され、業務管理や引き継ぎなどもスムーズになります。

クラウド会計について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください

5-2.請求書発行・受領システム

請求書発行・受領システムは、取引先への請求書作成から送付・承認・消込までを一括で行うツールです。
請求書管理には多くの工程が発生するため、一括管理できるシステムがあると大幅な時短や効率化が実現できます。システムによっては、取引先との契約状況に応じて紙やメール・PDFデータなどを分けて自動で発送できるものもあります。電子帳簿保存法に対応しているソフトも多いので、保存要件を満たして安全に管理することができます。

5-3.経費精算システム

経費精算を行う上で必要な申請書の作成、承認、その後の仕訳から会計ソフトへの流し込みまでを効率的に進めるシステムです。
経費精算は多くの従業員が関わる業務となるため、業務フローも煩雑化しており、遅延や人的ミスも発生しやすいのが特徴です。経費精算システムを活用すれば、従業員が経費精算書を作成・申請するところから、経理担当者が承認・入金するまでの一連の動作をワンストップで実施できます。また、申請に必要な領収書の読み取りや入力ミスがないかをチェックする機能や、会計ソフトと連携して帳簿付けまで対応してくれる機能が付いているものなど、さまざまなタイプがあります。

5-4.AI-OCR

AI-OCRは、画像やPDFからテキストデータを読み取り、AIによってテキスト化できるツールです。
領収書や請求書はスキャンすれば簡単にデータ化できますが、手書きの申込書やFAXで送られてきた帳票については経理担当者が手動で入力し直すケースも少なくありません。そのため、「打ち間違い」や「入力内容の確認」など、人的ミスや余計な工数がかかってしまっていました。ですがAI-OCRであれば、読み取ったデータをAIが自動でテキストに変換するため、入力にかかる時間を短縮できるうえ、人的ミスを減らすことができます。

5-5.ワークフローシステム

ワークフローシステムは、申請や承認の業務を自動化できるツールです。
例えば、経費精算であれば従業員が作成したものを上長が確認し、上長の確認後に経理担当者が確認・承認するのが一般的です。上長が不在の場合にはそこで確認が止まってしまいますし、書類にミスがあれば差し戻し依頼をしなくてはなりません。
ワークフローシステムを導入すれば、承認フローの状況が可視化されます。また、パソコンだけではなくスマホからも申請ができるシステムであれば、社外にいてもすぐに承認を進められるでしょう。加えて、ワークフローシステムによっては、入力内容にミスがある際自動でアラートが出る機能もついているため、差し戻しも減り、経理担当者の業務負担軽減も期待ができます。

5-6.その他ツール

そのほかのツールとしては以下のようなものが挙げられます。

・RPA
 手順の決まった単純な定型業務を自動化できるツール。入金の消込作業といったデータ入力や計算方法などをツールに記憶させて自動化し、業務を効率化することが可能。
・BI
 抽出した膨大なデータの集計や加工・分析・可視化・共有を一括して行えるツール。社内の資料作成や決算処理・原価、経費分析などに役立ち、経理業務以外における事業の意思決定においても重宝する。

これらのツールは経理業務だけでなく多くの部門で幅広く活用できるため、社内全体の業務を効率化できるでしょう。

経理業務のデジタル化についてまとめ

経理部でデジタル化を通常業務と並行して進めることは、なかなか難しく感じられる方も多いのではないでしょうか。しかし、電子帳簿保存法の改正や社会全体のDX推進を受けて、喫緊の課題となりつつあります。デジタル化を進めているものの、ツール選定や業務設計などの手間に懸念を感じている場合は、外部のコンサル会社やアウトソーシング企業へ相談・依頼してみるのもひとつの手です。

メリービズ経理DX』では、経理業務のデジタル化に悩む企業様のご相談をお受けしております。
ハンコ・紙文化からの脱却支援やクラウドシステムを活用した業務フロー改善など、幅広いご支援が可能です。

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