一人経理でもここまでできる!コア業務に集中するための対処法5選|企業ごとのコア業務具体例も <対策編>
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診断編においては、チェックリストを通じて一人経理の実像や業務領域、さらには問題点についておさらいしてきました。一人経理は「経理」や「経理を含むバックオフィス全般の業務」を一人で担当している人のことで、ハードな環境での業務を強いられているケースも少なくありません。
前回の業務負担度チェックリストでは、一人経理としての健康状態を客観的に把握できたことでしょう。負担の大きい一人経理の方は、ルーティン業務・ノンコア業務に割かれる時間が多く、コア業務に集中できないというお悩みが多くなります。この記事では企業フェーズごとのコア業務について紹介するとともに、コア業務に集中するためのノンコア業務の改善や効率化のための対処法について解説します。
※コア業務とは・・・・企業の利益や競争優位に直結する業務のこと。その企業の業界特性や組織特性とも強い関連性があり、その企業ならではの業務と言えます。経理であれば、フェーズにもよりますが管理会計の構築や予実管理、収益分析・シミュレーションなどのFP&A業務、また投資家や金融機関との折衝やレポーティングなどがあげられることが多いです。
中小企業・ベンチャー企業での経理コア業務
経理担当者にとってのコア業務は企業のフェーズによって異なります。ここからはベンチャー・スタートアップや中小企業でよく見られるコア業務について解説します。
ベンチャー・スタートアップにおいては、事業拡大を支えるために体制構築や、エクイティファイナンスを中心とした資金調達をおこなう必要があります。ルーティン業務の安定化、業務プロセスやルールの設計、管理会計の構築、資金調達にともなうステークホルダーとの関係づくりなどがコア業務となることが多いです。
中小企業においては、安定的な成長や財務的な健全性を求めることが一般的です。外部環境の変化にも対応できる資金繰り、財務状況の見える化、銀行をはじめとした金融機関へのレポーティング、管理会計の導入/刷新、などがコア業務となりがちです。
持続可能な仕組みの構築
一人経理その人に過度に依存しない、持続可能な経理体制を作ることは必須です。事業や組織の拡大にともない、業務量の増大や経理業務の複雑化・高度化などが求められることが多くなりますが、一人経理に属人化した体制では誰かがそれをサポート・協力することも難しく、単に業務が逼迫してしまうためです。ルーティン業務を見える化・マニュアル化・クラウド化することで、一人経理本人が仮にいなくても業務が効率よく進む環境を整えることが大切です。
財務状況の見える化・経営者の意思決定支援
①キャッシュフロー
中小企業において資金繰りは特に重要です。向こう数ヶ月、1年、数年それぞれの資金状況について見通せていなければ、その経営は目隠しをしながら車を運転しているようなもの。事業状況とキャッシュポジションの関連性を見通せるような経営管理が必要ですし、キャッシュ不足の懸念がある際にはコスト抑制や債権回収の徹底、場合によっては資産の現金化や外部からの資金調達に動くべき場面があるかもしれません。
②財務三表作成と決算早期化
年次決算は会社法等によって義務付けられており、財務三表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)の作成が必要になります。月次決算は任意決算にはなりますが、作成しておけば経営状態を正確につかむことができるだけではなく、年次決算の負担を減少させることができます。月次決算を安定化させるだけでなく、リアルタイム化・早期化することができれば、経営状況に合わせたより迅速な意思決定をおこなえるようになります。
③経営計画・予実管理
経営計画の策定や予実管理は、事業においてうまくいっていること・いっていないことを把握し、適切な意思決定をするためには必須のものです。経理や管理部門だけがモニタリングするのではなく、事業部門と共通の指標によって管理することで、経営の意思決定と事業の現場の行動をスムーズに結びつけられ、よりよい事業運営をおこなう下地づくりができることでしょう。
資金調達にともなうステークホルダーとの関係構築
企業経営においては、投資家からの資本参加や金融機関からの借入などで資金調達をおこなうことも日常茶飯事です。そういったステークホルダーとの関係構築はとても重要で、資金調達の方法や調達先の特性に応じた報告や対応をしっかりとおこなっていく必要があります。経営戦略や事業計画の策定だけではなく、資金繰り表の作成や資本政策の作成、企業価値に対する合理的な説明などが求められます。経理として、会社の事業成果を財務諸表や事業計画・予実管理などの形にまとめ、わかりやすい形で開示・報告できる状況を築いていきましょう。
会社のフェーズに応じたルール・プロセスの設計
経理における様々なルールやプロセスは、あくまでもその会社の各フェーズにおける最適解であることがほとんどです。会社の立ち上げ当初や個人会社に近い段階では、承認ルールや処理プロセスなどはほぼ存在していないに等しいですが、事業の進捗にともない社員や受発注先が増えていくと、発注先の管理や、金額に応じた稟議・承認ルールの設計、受発注における契約管理の厳格化などを進めていく必要があります。いずれも、それぞれの会社や事業に応じたオリジナルのものとなることが多く、まさにコア業務と言える内容です。
管理会計の導入/刷新
前述の「財務状況の見える化・経営者の意思決定支援」でもすこし触れましたが、精度の高い事業運営のためには、経営状況や指標の見える化が必須です。そこでキーになるのが管理会計の導入・利活用です。管理会計は、会計基準に準拠して主に外部への報告や納税のために必須となる財務会計・税務会計とは異なり、自社のより良い経営のため独自に策定・利活用する経営管理のこと。
・予実管理
・部門別損益
・原価管理
・その他重要指標の策定
・経営分析
などをおこなうための科目設計、事業状況に応じたモニタリングなどの一連の活動を指しています。経営陣や事業部の主要メンバーらと連携し、事業状況についての共通認識を持ち適切な打ち手を見出すための重要な基盤となります。
コア業務に集中するためのノンコア業務の進め方5ステップ
コア業務における「集中すべきこと」が明確になったので、次はノンコア業務の進め方を考えましょう。ここからは、ノンコア業務を効率化して一人経理が生産性を高めるための5つの具体的な方針をご紹介します。
業務の見える化
まずは業務の見える化をおこないましょう。業務プロセスや中身を適切に理解できていなければ、効率化できるポイントや問題・課題が明らかにならないからです。どんな業務をしているか?いつおこなっているか?どんな情報をもとにどう判断しているか?どれくらいの工数がかかったか?などをExcelやスプレッドシートなどに記録してみましょう。最初は漏れやダブりがあっても構いません、まずは業務をできるだけ見える化することが大切です。
デジタル化
経理業務のほとんどは最終的にすべてデジタル化できます。紙で存在する請求書や伝票も、スキャンや電子データへの切替によりデジタル化が可能です。デジタル化・データ化によって情報伝達のスピードや検索性が大幅に上がり、無駄な工程を省くことができます。加工や分析もしやすくなります。デジタル化を実現するために、いきなり基幹システムの導入・刷新などの大掛かりな施策を検討しなくてもかまいません。従来紙でやりとりしていた稟議書や、経費などの帳票、何気なくファイリングしている通知書や請求書などのデジタル化からはじめてみるとよいでしょう。
マニュアル化&業務フローの整理
経理業務のマニュアル化は、コア業務とノンコア業務を分けるためにとても大事です。多少の専門的な判断が必要だとしても、マニュアル化できる業務のほとんどはノンコア業務だと言えるでしょう。ある程度専門知識を持った人であれば、詳しく説明せずとも遂行可能なレベルまでマニュアルを作れてしまえばこっちのもの。アウトソースを活用したり、新たな人への引継ぎをおこなうなどして、一人経理から手放すことが可能となります。また、日々の業務をマニュアル化したり業務フローを整理しておくことで改めて自分の仕事内容を俯瞰的に捉えることができ、気付いていなかった改善点や、業務効率化のポイントが見えてくることもあるでしょう。
SaaSの活用
クラウド会計ソフトなどのSaaSを活用することで、業務の効率化を図ることができます。手作業でおこなっていた業務の自動化や、他ソフトやオンラインバンクなどとの自動連携ができるものが多数あります。会計ソフトはもちろんのこと、経費、請求書の発行・受取、販売管理、勤怠管理など様々な種類のソフトがリリースされています。クラウドならではの、他の作業者との共同作業や業務分担ができる範囲が大きく拡がることで、一人経理にありがちな「ミスに気付けない」「自分の替えが効かない」といった属人化による悩みを解決できます。無料でお試しできたり、比較的安価で導入できるソフトも多く、導入にあたっての社内決裁ハードルも低いです。貴重なリソースを確保するための施策としてご検討ください。
業務のリストラ
取り組んでいる業務を見直したうえで、それぞれの業務のリストラ・再設計ができればベストです。前述の見える化をおこなったシートを開いたら、ぜひ下記の分類をもとに、積極的な業務リストラをお試しあれ。
それぞれの業務を、
①辞める:実はやらなくてもいい業務、自動化などをすることで手離れできる業務を発見しましょう。
②減らす:辞めることはできないが、自分がやる分量は減らせる、他者に引き継げる業務を見つけましょう。
③続ける:そのままの分量、投下時間のまま続けるべき業務も決して少なくないかもしれません。
④改善する:システム化・データ化・一部自動化などにより、効率を上げられる業務が該当します。
⑤増やす:さらに積極的におこなっていく、増やしていきたい業務もあるはずです。コア業務を含められるといいですね。
⑥始める:いままでやっていないが新たに始めたい業務です。コア業務や、効率化のための業務、マネジメント業務などが該当するかもしれません。
初めのポイントは①と②をどんどん増やしていく発想を持つことです。まず仕事を減らすことで、コア業務や業務の改善そのものに集中することができるからです。その後、継続するもの・改善が必要なものは、定型化や自動化、アウトソーシングなどを検討しましょう。特にノンコア業務の場合、安定して業務を実行できる自動化やアウトソーシングと相性が良いです。うまくノンコア業務を減らしながら、コア業務に集中できる環境を整えましょう。
まとめ
企業の規模や形態によってコア業務の内容は異なるため、コア業務とノンコア業務の違いを認識して、必要な業務に集中できる環境を整えましょう。もし、自社で業務整理やノンコア業務の効率化を進めることが難しい場合は、弊社の「バーチャル経理アシスタント」にぜひご相談ください。
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