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  • ”経営に貢献できる経理部”へ。『ブラックサンダー』大ヒットの有楽製菓が推進した、経理DXの舞台裏。

    有楽製菓株式会社

    業種
    菓子製造販売
    従業員数
    458名

    導入について

    1955年創業の老舗菓子メーカー・有楽製菓。看板商品の『ブラックサンダー』は、1994年の発売直後こそ販売不振に苦しんだものの、2000年代に入ってから大ヒット。その人気は衰えるところを知らず、現在ではシリーズ累計年間2億本を販売する「国民的チョコレート菓子」となっている。

    そんな『ブラックサンダー』の爆発的ヒットに伴い、同社の売上高は、20年で30億円から165億円へと急成長。一方、経理やバックオフィス業務においては、紙や現金でのやりとりを前提にした非効率なフローが多く残っており、事業成長のボトルネックとなるのも時間の問題だった。

    そこで同社経理部は、2022年11月に、新たなシステム導入と併せて『バーチャル経理アシスタント』を導入。経理業務のDX化とアウトソーシングを見事成功させ、現在では全社のDXを牽引する存在となっている。

    全国に複数の拠点があり、そのそれぞれに属人化した業務フローがしっかり根付いてしまっていた中、どのようにしてDXプロジェクトを進めたのか。

    有楽製菓経理部の中村昌彦氏、安孫子樹理加氏、武田博子氏、吉川七海氏にお話を伺った。

    売上は30億から165億に。『ブラックサンダー』の伝説的大ヒット

    ──まずは、貴社の事業内容について教えていただけますか。

    中村:1955年創業の創業以来、「夢のある安くておいしいお菓子を創造する企業を目指します」という経営理念の下、菓子の製造・販売を行っています。主力はやはり『ブラックサンダー』ですね。ファミリーサイズやご当地限定フレーバーなど、約50種類のシリーズ商品があります。それ以外にも、主にコンビニエンスストアで販売している『チョコケーキ』や、直営店・通販限定で販売しているチョコレート製品があります。

    ──「夢のある安くておいしいお菓子」、まさに『ブラックサンダー』ですね。今や知らない人はいないぐらい人気のお菓子だと思いますが、発売から30年が経った現在でも、販売数は伸び続けているのだとか?

    中村:そうなんです。1994年の発売以降、じわじわと売れている状況が続いてはいたのですが、2008年の北京オリンピックの際に、日本代表選手が「好きなお菓子はブラックサンダー」と発言してくださったことをきっかけに、爆発的に売れました。しばらく生産が追いつかない状態が続き、2011年に豊橋夢工場を新設して生産体制を強化。さらに販売数が伸び、現在ではシリーズ年間販売本数2億本以上、チョコレート市場ブランド売上個数No.1(※1)の人気商品になっています。

    ──伝説的な大ヒットですね。会社組織には、どんな変化がありましたか?

    中村:まず売上ですが、20年程前までは30億円程度だったところから、現在約165億円にまで急成長しています。組織も、以前はどちらかというと家族経営のような雰囲気であったと思いますが、現在の従業員数は458名にまで増え、事業規模を拡大しています。

    ただ、急速な事業の成長に、業務体制はまったく追いつけていなくて……。私は約6年前に中途入社をしたのですが、「この売上規模で、このやり方では大変すぎる…」と、正直驚いてしまいました。

    現金を封筒に入れて経費精算ーー入社した時の驚きが、DX推進のモチベーションに

    ──事業は急成長しても、業務体制は変わっていなかったのですね。具体的には、どのような状況だったのでしょうか。

    中村:東京、豊橋、札幌の拠点がそれぞれ独自の方法で経理処理を行っており、まるで別会社のようでした。それぞれの拠点の担当者に業務が完全に属人化しきっていて、他の人では触れないような状態でした。本来ならば、業務フローを見直しデータを活用するべきだと思うのですが、そうした取り組みも追いついておらず。

    また、約5年前に経費精算のシステムを導入したのですが、それまでは現金を封筒に入れて手渡しで経費を支払っているような状態でした。既に『ブラックサンダー』は全国的に有名で“大成功しているメーカー”というイメージがあったので、実情を知り本当に驚きました。しかし、そのときの衝撃が、業務改革を検討するきっかけにもなりました。

    ──なるほど。そうした経緯があって、DXを推進されてこられたんですね。

    中村:はい。私が東京本社に異動になってからすぐに課内メンバーの再編成があったこともあり、一気に改革を進めていこうと。ちょうどコロナ禍のタイミングでもあったので、まずはオフィスに出社しなくても業務が進められるよう、ペーパーレス化とキャッシュレス化を進めました。業務の「可視化」「標準化」「自動化」「統制強化」を4つの柱に、システムの導入や業務フローの改善を行っていきました。

    ──長年定着していたやり方を変えるのは、簡単ではなかったのでは?

    中村:そうですね、やはり長年染みついていたやり方を急に変えるのは、簡単ではありませんでした。しかし、その中で1つの大きなターニングポイントになったのが、「月次決算早期化」の実現です。「月次決算早期化」は、経理部が長年取り組んできたテーマで、私が入社した約6年前は、月次作業の締めがだいたい翌月15日ぐらいでした。しかも、月次業務としては締められていたものの、経営資料としてのデータ活用はとても使いづらい状態でした。

    そこでまずは、「月次決算を5営業日で締めること」を目標に、システムの導入や業務改善を重ね、なんとか5営業日での締めを実現しました。

    ──15日を5日に短縮はすごいですね!

    中村:ありがとうございます。でも、ここで満足してはいけないと思いました。というのも、毎月7営業日目が経営会議を実施するスケジュールなのですが、そのためにはどうしてももう1日、締め日を縮める必要があったんです。

    どんな方法なら実現可能だろうかと模索しているうちに、インボイス制度の施行や電子帳簿保存法といった法制度対応の必要性もあり、「AI-OCR」搭載のシステム導入を検討し始めました。その際、人員も足りていませんでしたし、属人化の課題も大きかったので、「AI-OCR」に併せてアウトソーシングサービスも導入しようという発想になっていきました。

    ──他のアウトソーシングサービスも検討されましたか?

    中村:いくつかの会社さんに相談させていただき、比較検討しました。その過程で、他のアウトソーシングサービスは保守的な雰囲気のところが多かった中、メリービズさんにはビビッと来るものがあったというか。柔軟性やスピード感を重視したい私たちのニーズにマッチしていると感じ、メリービズさんを選びました。

    上席役員からもポジティブな理解をもらえましたので、システム導入とメリービズさんへのアウトソーシングを併せて提案し、承認を取りつけました。

    各拠点での引き継ぎは、足を運んで丁寧に説明

    ──オンボーディングのプロセスはスムーズに進みましたか?

    中村:業務の引き継ぎは現場の担当者間で進めてもらったので、具体の内容まではわからないのですが、レスポンスが速く、非常に効率的な印象を受けました。

    吉川:最初の頃はミーティングの機会を何度もつくっていただき、その都度「これが課題ではないでしょうか」「この課題を解決するとこう変わります」とご説明いただけたことで、スムーズに業務フローが構築できたと思います。

    安孫子:定型業務の引き継ぎは比較的簡単だったのですが、完全に属人化しきっていたイレギュラー業務がたくさんあり、その引き継ぎはやや大変でした。吉川やメリービズさんのコンサルタントと相談しながら、イレギュラー業務をひとつひとつ潰していった感じですね。それが終わってからは、だいぶ楽になりました。

    武田:「書面とオンラインのやりとりだけで引き継ぎ」というのは今回はじめての試みだったので、当初はけっこう不安がありましたが、スムーズに進んだ印象があります。そこまで心配するほどではなかったのかなと。

    ──他の社員や各拠点の経理担当者とのやりとりは、どのように進めていかれたのでしょうか。

    吉川:各拠点に長年経理業務に携わってきた担当者がいましたので、それぞれの拠点に足を運び、「こう変わります」「こんなふうに楽になります」と、丁寧に説明をしました。

    いろいろと意見もいただきましたが、インボイス対応などもあり、いずれにしても従来のやり方を変える必要はあったので。メリービズさんに作成いただいた資料も活用させていただきながら説明し、最終的には問題なく引継ぎが完了しました。

    ──経理部のメンバーの中では、既存のやり方を変えることに対する抵抗感などはなかったのでしょうか。

    武田:今までやってきたことをそのまま続けるのが人間にとっては一番楽なので、正直「面倒くさいな」という感覚はありました(笑)。とはいえ、自分が働き始めた頃と比べても、世の中は大きく変わっています。「時代の流れについていかなければ」という意識を持ちつつ、周囲にも刺激をもらいながら、なんとか頑張っています。

    吉川:既に既存業務で手一杯だったところに、「今後は業務を改善し、コア業務に集中へ」と言われたので、「ただでさえ時間がないのに、どうしよう……」と途方にくれたことはありました。でも、業務改善を進めたことで、結果的に急ぎの業務に手を取られる時間が減り、考える時間を増やすことができました。自分の考え方に大きな変化が起きたと感じています。

    安孫子:経理業務には割と保守的な人が多いと思うのですが、中村はどんどん新しいことを積極的にやっていこうというタイプで。やってみると、実際に自分が楽になるので、いまは「とりあえずやってみよう」というマインドに変わってきています。

    ルーティン業務の移管によって、コア業務に注力できるように

    ──『バーチャル経理アシスタント』の導入前と導入後で、どのような変化がありましたか?

    中村:仕事の内容と意識が大きく変わりました。以前はどうしても、「ノンコア業務」と総称される定型的な業務に没頭してしまいがちでした。しかし、そうした業務をメリービズのスタッフさんに委託できたことで、現在は決算書の分析等のコア業務により多くの時間を割けるようになっています。

    また、豊橋夢工場と同規模の新工場を2024年12月完成予定で建設しておりまして。新たな設備投資を行う上で、減価償却がどれだけ発生するか、人員や経費がどれだけ必要となるのかといった中期経営計画のシミュレーション作成が可能となり、経理部として経営に貢献できるようになったと感じています。

    安孫子:以前は各拠点の総務が経理業務を担当していたのですが、経理の専門スタッフではないためミスも多く、確認作業にけっこう時間を取られていました。

    一方、メリービズさんにお願いをしてからは、ミスがほとんどなくなり、チェック作業はほとんど不要なレベルにまでなりました。細かなチェック作業が減ったことで、キャッシュフロー管理やデータの集計など、よりマクロな視点が求められる業務に取り組めるようになりました。

    吉川:新卒で入社した5年前は、自分で手入力業務をおこなっていたのですが、いまはそうした業務はほぼなくなりました。情報システム課に異動後は社内ネットワークの構築やChatGPTの導入など、システム系の業務に注力することができています。『バーチャル経理アシスタント』を導入したことで、締め日もさらに短縮でき、会社に貢献できていると感じます。

    武田:売掛金の突き合わせや値引きの入力といった細かな業務を移管できたことで、そうした業務に取られていた時間を大幅に削減することができました。以前はほとんど売掛金の入金業務にしか携われていなかったのですが、現在は支払い業務にも踏み込めるようになってきています。

    ──どのような点に、アウトソーシングサービスのメリットがあると感じますか?

    武田:「業務の引継ぎ」がなくなるのは大きな魅力だと思います。これまでは、人の入れ替わりがあるたびに何度も同じ内容を引き継いでいたのですが、自分の仕事もある中で、新しく来た人に業務内容を教えるのはすごく大変でした。

    一方今後は、スタッフさんに入れ替わりがあってもメリービズの内部で引き継ぎをしていただけるので、私が直接引き継ぎに関わることはありません。これは非常に大きなメリットだと思います。

    また、自分がこれまでやってきた業務が本当に効率的なのかどうかを外部の視点で見直すきっかけになったのも、よかったポイントだと思います。

    ──『バーチャル経理アシスタント』の導入によって、経理部以外の社内に波及した効果などはありましたか。

    中村:これまでは、「なるべく社内のリソースでやるべき」という「自前主義」的な文化が強かったのですが、『バーチャル経理アシスタント』の成功事例を受けて、その意識が変わり始め、他部署でもアウトソーシングが進んでいます。

    具体的には、直営店の運営や通販の受注・出荷業務をアウトソーシングに移行しました。DXやアウトソーシングはひとつの部署だけが進めるだけでは勿体ないと思いますので、「すべてを自分たちでやらなくてもいい」「外部のリソースをお借りして、自分たちがより楽になる方法を追求していい」、そんな意識を社内にどんどん浸透させ、全社でバランスよくレベルアップしていきたいと思っています。

    ▲有楽製菓本社の直営店 外観

    さらなる飛躍を目指し、“経営に貢献できる経理部”へ

    ──先ほど新工場建設のお話もありましたが、貴社の今後のビジョンについて教えていただけますか。

    中村:現在、売上165億円というところまで来ていますが、次の5年間でこれを300億円まで伸ばすという中期経営計画を立てています。チャレンジングな目標ですが、12月に完成予定の新工場は現在稼働している豊橋夢工場とほぼ同規模であり、これだけの売上を支えられる製造キャパシティはあるというロジックです。

    この達成のために、新工場完成のニュースをフックにしたプロモーションはもちろん、海外展開にも力を入れていく予定です。コストコさんで人気な「ビッグシェアパック」という大袋入り商品について、最近北米でもテスト販売を始めたのですが、これがなかなかに好調で。今後は北米展開にも、本格的に力を入れていきたいと考えています。

    ──まだまだ成長は続くのですね!そのビジョンを実現する上で、経理部として、個人として、今後取り組みたいことなどはありますか。

    中村:経営に貢献できる経理部になるために、一層のレベルアップが必要だと思っています。具体的には、経営計画の策定や予算管理、原価計算など、より本質的な業務にメンバーが注力できるような体制を、つくっていきたいと思います。

    安孫子:年明け早々に会計システムの入れ替えを予定しているので、これを機にいっそうDXを進め、業務を効率化したいと考えています。その際はまたメリービズさんにご相談させてください。

    吉川:『バーチャル経理アシスタント』の導入を通じて、さまざまな新たな視点を得ることができました。今後はこの経験をもとに、他部署に新たな取り組みやDXの事例を展開する情報システム課の一員として、全社的なDX化を推進していきたいと思います。

    武田:私の業務はメリービズさんに引き継いで約半年になりますが、私のやり方をそのまま引き継いでしまったので、もう少し効率化できるところがあるんじゃないかと感じています。今後は、新たなシステムを導入したり、他社の事例なども共有いただいたりしながら、いっそう業務を効率化していきたいと思います。

    ──最後に、協働させていただいているスタッフにメッセージがあればお願いします。

    中村:タイトなスケジュール調整や無理なお願いにも柔軟にご対応いただいており、非常にありがたく思うと同時に、皆さんの働きぶりが本当に素敵だなと感じます。先日は皆さまに『ブラックサンダー』をお配りして食べていただきましたが、ぜひ有楽製菓の一員として、製品に愛着を持っていただけたら嬉しいです。

    安孫子:おかげさまで、「ノンコア業務からコア業務へ」という会社の方針を実現することができましたし、自分の業務が楽になり、ワーク・ライフ・バランスが整ってきていると感じます。今後ともよろしくお願いします。

    吉川:最初はほとんど何も決まっていなかったところから、皆さまがいろいろな質問を投げかけてくださり、社員では気づけなかったところを指摘してくださったことで、業務フローが構築できました。おかげさまで、いまは新たな業務に携わることができています。これからも、どうぞよろしくお願いします。

    武田:スタッフの皆さんには、いつも本当に感謝しております。引き継ぎ当初からやり取りさせていただいていますが、同じような内容の質問が全く来ないのがすごいなと感じています。納品物を拝見しても、ほとんど間違いがなく、安心してお任せできています。引き続きどうぞよろしくお願いします。

    ※1:インテージSRI+ チョコレート市場 期間:2023年1月~12月 推計販売規模(個数)
    有楽製菓公式HP ニュースリリースより》

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