経理業務のマニュアルを作成するには?必要な理由やよくある失敗も紹介

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経理は企業のお金を管理する重要な部署ですが、業務が属人化しやすく業務量が多いなど、多くの課題を抱えています。課題の解消にマニュアルの作成は重要ですが、ポイントを押さえたマニュアルでなければ、業務にうまく活用できないでしょう。

本記事では、経理業務のマニュアル作成のポイントを解説します。マニュアルが必要な理由や、よくある失敗についてもご紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

1.経理部門が抱える課題

経理部門は、企業全体のお金の流れを把握し管理する部署のため、全ての企業で必要です。企業を支える存在の経理部門ですが、課題として以下が考えられます。

  • 業務が属人化しやすい
  • 1人あたりの業務量が多い
  • イレギュラー業務が多い
  • 正確性が求められるため業務スピードが下がりやすい

順番に見ていきましょう。

1-1.業務が属人化しやすい

経理部門が抱える課題として挙げられるのは、業務が属人化しやすい点です。

属人化とは、特定業務に関する手順や情報を担当者のみ把握しており、周囲に共有されていない状態を指します。経理部門の業務は、仕訳や経費の精算などを複数の担当者で行うことがほとんどです。しかし、年に1度しか実施されない決算や開示書類などに関する業務は、ベテランの方が担当することが多いでしょう。

担当者間でうまく引継ぎ、分担できれば良いのですが、決算時の慌ただしさなどでタイミングを逃してしまう場合もあります。引き継ぎができないまま、対応できる社員が異動や退職となってしまえば、現場の混乱を招くこととなる点は、見逃せない課題といえるでしょう。

1-2.1人あたりの業務量が多い

次に挙げられる経理部門の課題は、1人あたりの業務量が多い点です。

ひと言に経理といっても業務の内容は多岐に渡り、日々の取引の仕訳から給与関連業務、取引先への請求・入金業務などを実施しなければなりません。

簿記知識の習得や専門性の高いスキルが必要である経理は、一度揃えば新たな人員が配置されにくいため、1人あたりの負担が大きくなってしまうことが実情です。人材を補うことを後回しにしてしまえば、繁忙期に残業続きとなり、労働環境を悪化させてしまうことも考えられます。

1-3.イレギュラー業務が多い

また業務量が多いだけでなく、イレギュラーな業務が多い点も経理部門が抱える課題です。

経理の仕事はルーティン化された単調なものであると思われがちですが、経理に関する基準や税法は頻繁に改正され、変更のたびに対応する必要があります。2023年の10月に施行された消費税および地方消費税に対して導入された「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」は、特に経理部門に影響を与えたものとして、記憶に新しいのではないでしょうか。インボイス制度については、以下のコラムで詳しく解説しています。



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経理部門では、税法や基準の変更を受けた後、昨年まで行っていた方法は認められず、書類を作り直したり、修正申告を行わなければいけなかったりするケースも少なくありません。また経理システムの不調で業務が滞ったり、他部署の社員の知識不足により処理が進まなかったりと、スムーズに業務を進められない場合もあります。

1-4.正確性が求められるため業務スピードが下がりやすい

経理部門では、正確性が求められるため、業務スピードが下がりやすい点も課題です。

経理は売上を直接生み出す部署ではありませんが、企業のお金を管理する重要な部門です。
たとえば企業の口座にある資金を操作する際に、1桁間違ってしまっただけで、大きな損害に繋がってしまう恐れもあります。一瞬の気の緩みや操作ミスが企業全体に影響を及ぼす経理部門は、失敗が許されません。

正確性を求めるため入念なチェックが必要となりますが、結果として業務スピードが下がりやすい課題が生まれてしまいます。

2.経理業務にマニュアルが必要な理由

経理部門が抱える課題は複数ありますが、解決策として必要なものがマニュアルの作成です。経理業務にマニュアルが必要な理由として、以下の3つが考えられます。

  • 業務のクオリティを均一化しやすい
  • 業務の属人化の解消や効率化が見込める
  • 業務引き継ぎや新人教育がしやすくなる

順番に見ていきましょう。

2-1.業務のクオリティを均一化しやすい

経理業務にマニュアルが必要な理由として挙げられるのは、業務のクオリティ(品質)を均一化しやすいことです。業務の流れや方法を詳しく記したマニュアルがあれば、担当者が異なる場合でも、クオリティを均一化しやすいメリットがあります。

年に一度の決算業務を一人の社員しか対応できない場合、その社員が退職してしまえば、現場は混乱に陥ることにもなりかねません。実際に業務を見て説明を受けられれば良いですが、難しい場合でも、マニュアルを作成しておけば慌てずに行えます。

マニュアルを作成するポイントについては後述しますが、各業務のコツや注意点も記載しておくと、作業方法のバラつきも抑えられます。

2-2.業務の属人化の解消や効率化が見込める

次に経理業務にマニュアルが必要な理由として挙げられるのは、業務における属人化の解消や、効率化が見込めることです。年に一度の決算などの場面に指導者がいない状態でも、マニュアルがあれば、作業方法や流れを把握しやすいでしょう。

またマニュアルは、業務の流れを記すだけではなく、各々が得た知識やノウハウを一箇所に集める場所でもあります。感じたポイントや、書いておいたほうが良い注意点などを一緒に記載しておけば、イレギュラーな事態にも対応しやすくなります。マニュアルは都度改訂を行い、ノウハウが蓄積されて作り込んだものとなれば、業務の効率化にも繋がります。

2-3.業務引き継ぎや新人教育がしやすくなる

最後に経理業務にマニュアルが必要な理由として挙げられるのは、業務の引き継ぎや新人教育がしやすくなる点です。マニュアルがあれば業務の引き継ぎはもちろん、新たに配置された新人への教育がしやすくなります。

口頭での説明が難しい業務でも、図やチャートなどで可視化できるマニュアルは、新人教育において利用すべきものといえます。知識の詰め込まれたマニュアルは「社員を大切にし、生産性を意識する会社だ」という印象にも繋がるため、ぜひ作成しておくとよいでしょう。

3.経理業務のマニュアルでよくある失敗

経理業務におけるマニュアルの必要性について見ていきましたが、マニュアル作成において、以下のよくある失敗についても見ていきましょう。

  • 十分な情報更新がされていない
  • 作成者によって書き方・様式が違う

時間を割いてマニュアルを作成するのであれば、前述したメリットを活かせるマニュアルを作成すべきです。マニュアルで起こりがちな失敗例を知り、自身で作成する際に同じことを起こさないよう、気をつけましょう。

3-1.十分な情報更新がされていない

経理業務のマニュアルでよくある失敗例として、情報が更新されていないことが挙げられます。時間をかけてマニュアルを作成したものの、更新を怠ってしまえば、間違った情報を基に業務を行った結果、やり直しになってしまうことも考えられます。

マニュアルの情報更新ができていないと、担当者に聞いたほうが早いと感じたり、情報が合っているかわからず不信感を持たれ活用されなくなる可能性もあります。ただし経理は1人あたりの業務量が多く、頻繁に変わる基準や税法などにより、マニュアルの更新を頻繁に行えない場合もあるでしょう。

 

更新に手間がかかりすぎないよう、マニュアルをどう運用していくか、更新手順を事前に決め、業務に組みこんでおくことも大切です。改訂の頻度についてもしっかりと話し合い、作成者の裁量任せにならないように行いましょう。

3-2.作成者によって書き方が違ってわかりにくい

マニュアルの作成者によって書き方が違ってわかりにくい点も、経理業務のマニュアルでよくある失敗例です。さまざまな業務を担当している経理部門ですので、各業務の担当者が別の業務を行います。それぞれがマニュアルを作成した場合、記述様式が異なることでわかりにくくなってしまうことも。

経理業務といった枠組みで、内容にバラつきのあるマニュアルを渡されても、すぐに実務に活かすことは難しいでしょう。マニュアルは、読めば業務の標準や全体像がわかるものであることが必要です。誰が読むのか、どの場面で使うのかを考えて、見出しや用語など、ルールを統一した状態で作成しましょう。

4.経理業務のマニュアルを作成するポイント

経理業務のマニュアルを作成するポイントは、以下の4つです。

  • 動画や音声、ツールなどを活用する
  • フローチャートや図を活用する
  • 抜け漏れのないように記入する
  • 社内用語や専門用語などは注釈をつけるなど、読み手がわかるように書く

順番に見ていきましょう。

4-1.動画や音声、ツールなどを活用する

経理業務のマニュアルを作成するポイントは、動画や音声、ツールなどを活用することです。ひと昔前のマニュアルと異なり、電子化されたマニュアルでは、文字だけでなくさまざまな方法で業務内容を伝えられます。

特に言葉で説明するのが難しい作業や、目で確認したほうがわかりやすい操作などに関しては、動画や音声が役立ちます。業務遂行中の一画面をPCで録画するなどし、社内共有用として保管することをおすすめします。また、近年は生成AIを活用したツールや、資料作成ソフトなど、簡単にマニュアルを制作できるツールなども豊富に提供されています。ぜひ、活用をご検討ください。

4-2.フローチャートや図を活用する

動画や音声と同じく、フローチャートや図の活用も、経理業務のマニュアルを作成するポイントです。フローチャートとは、業務のプロセスやシステムなどを示した流れ図を指します。

多岐に渡る経理業務のマニュアルは、まずフローチャートや図で全体像をわかりやすく示すことで、理解度が高まります。フローチャートに業務を担当している社員の名前や、マニュアルのページ数を記載するなどして、視覚的に伝わりやすい工夫を行いましょう。

4-3.抜け漏れのないように記入する

経理業務のマニュアルを作成する際は、抜け漏れのないように記入することも大切です。

経理業務には、毎日行う「日次業務」のほか、毎月一定時期に行う「月次業務」、年に一度行う「年次業務」など、実施頻度が異なる業務が存在します。
たとえば上記のうち、業務頻度がマニュアルに記載されていなければ、実施すべき時期に業務を行えず、トラブルを招いてしまう可能性があります。マニュアルを作成する際は、業務の注意点や手順はもちろん、実施頻度や実施日などの記載も忘れないようにしましょう。

抜け漏れを防ぐため、マニュアルを作成する際はテンプレートを用意し、項目に沿って作成するなどの工夫をすることもおすすめです。

4-4.社内用語や専門用語は注釈をつけるなど、読み手がわかるように書く

社内用語や専門用語には注釈をつけるなどして、読み手がわかるように書くことも、経理業務のマニュアル作成の重要なポイントです。経理に配属される人材が、あらかじめ社内や経理業務についての知識を全て理解しているとは限りません。

社内用語や専門用語、略語などを使ったマニュアルに理解が追いつかず、ミスやトラブルを引き起こしてしまう可能性もあります。読みづらいマニュアルは読み手の意欲を下げてしまう原因にもなりかねないため、社内用語や専門用語は一般的な言葉に噛み砕き、誰が読んでも理解できる内容にしましょう。

ただし、この先業務で多用する言葉によっては、説明した方がわかりやすい場合もあります。その場合は注釈をつけたうえで「以下○○とする」と記すなど、読み手に配慮したマニュアルを作成しましょう。

経理業務のマニュアルについてまとめ

経理部門は、売上に直結する部署ではないため注目されづらいですが、会社のお金に関して日々さまざまな業務を抱えている、非常に重要な部署です。また、業務が属人化しやすい、一人あたりの業務量が多いなど、多くの課題も抱えています。

業務品質の均一化や属人化の解消、スムーズな引き継ぎや新人教育のため、経理業務のマニュアルが望ましいです。一方マニュアルを作成しても更新が滞ってしまったり、担当者によって書き方が違って見づらくなってしまったりと、うまく活用できない場合も少なくありません。

また、マニュアル化を進める前に、自社の業務フローについての改善や効率化を目指される企業様も多いのではないでしょうか?経理業務のマニュアル化だけではなく、業務フローの改善・経理全体の効率化などについてもお悩みの方は、『メリービズ バーチャル経理アシスタント』にご相談ください。メリービズでは、さまざまな経理業務を代行することが可能です。。

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