管理会計とは?目的やメリット、実務の具体例など基本をわかりやすく解説

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管理会計とは、自社の経営に活用することを目的とした会計のことです。

管理会計を取り入れることで、経営状態の把握や迅速な経営判断がしやすくなります。経営方針に現場のリアリティを反映させたり、現場の状況をその会社に合わせた形で把握することができるため、強い経営戦略を構築し、従業員の意欲向上に繋がるなどのメリットも期待できます。一方、管理会計には決まったフォーマットがないため、管理や分析の方法が分からず困っている方もいるでしょう。

そこで本記事では、管理会計の目的やメリット、実務の具体例について解説します。財務会計との違いについても触れていますので、ぜひ参考にしてください。

1.管理会計とは

管理会計とは、外部報告用の財務会計とは異なり、自社の経営に役立てるための社内用の会計のことです。

企業によって重要視する情報が異なるため、管理会計に決められた形式はありません。自社で管理しやすいよう、週単位や月単位・年単位で会計を作成します。管理会計自体を導入しない企業もありますが、管理会計から自社の状況を的確に把握して分析ができることから、会社方針の見極めにも重要です。具体的には、事業別損益や商品別利益率を把握したいときに使われることが多いでしょう。

1-1.管理会計の目的

管理会計の目的は、経営状況の把握と数値からみた経営判断に役立てることです。

数字によって可視化させることで、自社の経営状況を客観的に把握できるようになります。商品別や部門別など、さまざまな数値の分析により市場での位置やウィークポイント、伸びしろがある部分を把握することによって、自社の経営戦略につなげられるでしょう。また、管理会計の導入は法制度による規定はなく、任意であるため、週ごとや月ごとに実施することもできます。スピーディーな経営判断につながるでしょう。

 

1-2.財務会計(制度会計)との違い

管理会計が、経営者や責任者が自社の経営に役立てる目的で内部向けに行う任意の会計に対して、財務会計(制度会計)は、会計基準や法を基に全ての企業で行わなければならない会計です。

財務会計(制度会計)は、企業外部に向けて自社の経営状態や成績について報告する目的があります。また、財務会計(制度会計)は、株主・債権者・投資家などの利害関係者が業務比較する会計でもあるため、同じ会計基準によって作成します。
管理会計と財務会計(制度会計)それぞれの目的や基準、使用者は以下の通りです。

管理会計 財務会計(制度会計)
目的 経営判断 財産・利益の計算
決算書作成
作成基準 企業ごとの基準 会計基準
使用者 経営管理者(内部) 企業外部の利害関係者
(株主・債権者・投資家など)

上表でまとめた財務会計と制度会計は、広義な解釈では同じです。
ただし、厳密にいえば、制度会計は「財務会計」と「税務会計」の2つに分類され、それぞれの目的や対象者なども異なります。「財務会計」は企業の財政や業績などを外部に報告するための会計ですが「税務会計」は、税法に基づいて税金を計算して申告するための会計です。

2.管理会計を導入するメリット

管理会計を導入するメリットは、以下3点です。

  • 経営判断の精度が上がる
  • コスト削減を図ることができる
  • 部門や従業員に対する正確な評価を行うことができる

それぞれ詳しく解説します。

2-1.経営判断の精度が上がる

管理会計を導入し、経営状況を可視化することで、経営判断の精度が上がります。
経営陣は、正確な情報やデータを基に多角的な分析をすることで、素早く効果的な意思決定や具体的な施策を立てられるからです。経営判断の精度を上げるためには、自社に合わせた管理会計の導入が必要です。たとえば意思決定会計(戦略管理会計)や月単位・週単位の管理会計が挙げられます。

意思決定会計(戦略管理会計)とは、未来の取組みに対して経営陣が適切な経営判断をするために必要な情報を用意するための会計のことです。そのため、意思決定会計(戦略管理会計)は、特定の会計処理ではなく管理会計が担う主な役割のひとつと言えます。また年単位などの大きなくくりではなく月単位や週単位の経営状況を確認することで、迅速な経営判断ができるのもメリットです。

2-2.コスト削減を図ることができる

管理会計を行うことによって、コスト削減もしやすくなります。
経営状態が可視化でき、製品やサービスの原価や利益率の算出、組織内のさまざまな活動やプロセスに関するコストを詳細に分析できるためです。たとえば、販売や一般管理業務によって発生する賃借料や光熱費、広告宣伝費などの販管費は、可視化させることにより、社内全体でコスト削減の活動が取り組みやすくなります。また、固定費と変動費を分けて分析することにより損益の流れや分岐がわかりやすくなるため、コスト削減箇所が明確になります。

このように、管理会計を行うことによって、無駄な支出やプロセスを特定しやすく、業務の効率化に繋がるでしょう。

2-3.部門や従業員に対して正確な評価を行うことができる

管理会計により、業績やコストなどを具体的に算出しやすくなることで、コスト削減といった目標が可視化され、各部門や従業員に対して正確な評価を行うことが可能です。
また、現場の指示に客観性と具体性が加わるため、戦略の見直しやそれぞれの計画についても、適切に行えます。さらに、従業員に対して正確な評価がしやすくなり、従業員の意欲向上に繋がります。その結果、生産性向上と利益率改善の相乗効果になる可能性が高いでしょう。

3.管理会計の実務の具体例

ここでは、管理会計の実務の具体例を解説します。主な実務は以下の4つです。

  • 予実管理
  • 原価管理
  • 資金繰り管理
  • 経営分析

それぞれ解説します。

3-1.予実管理

予実管理とは、目標に合わせた予算と実績を把握するための管理方法のことです。
エクセルによる管理や、会計システムを利用した管理などがあります。より理想的な管理は、実績の変化をリアルタイムで追い、比較できることです。予算管理をすることによって、たとえ予算が達成できなかった場合でも原因を把握できるため、分析結果を元に改善案を考えることもできます。
また、目標が達成できない原因のひとつに、実態を把握できていないことによって適切な予算設定ができていない場合があります。予実管理により、過去データの分析やリアルタイムの動きなど、あらゆる角度から予算と実績を比較すれば軌道修正が可能です。

3-2.原価管理

原価管理とは、製品の製造にかかる原価を把握し、改善を行うための管理方法のことです。原価計算表などを利用して、原価の目標値と実績値を管理します。
原価については、製品を作る際の原材料に限らず、人件費や設備費についても算出します。原価の把握は、利益の確保にとって非常に大切です。原価管理で原価を適切に把握することで、経営状態の正確な把握とコストや利益率の改善に繋げます。

3-3.資金繰り管理

資金繰り管理とは、日々の入出金を把握し、会社の運営に支障が出ないようにする管理方法のことです。
たとえば、損益計算書では利益としてあがっていたとしても、商品の引渡しの際には支払われない「掛取引」などにより現金が手元にない場合があります。その結果、キャッシュが足りない状況に陥る可能性もあります。資金繰りを誤ると、自社の支払い資金の調達が期限に間に合わない事態に陥りかねません。

資金繰り管理を行えば、債権現金化の時期や支払うべき債務を明確にでき、手元にある資金の流れを把握して調整できます。

3-4.経営分析

経営分析では、企業の損益や資産などをさまざまな指標と角度から把握します。どれほどの収益があり安全に資産を運用できているのか把握することによって、改善点や企業の強みを見つけやすくなります。
経営分析に使用される指標は主に収益性、安全性、生産性、成長性の4点です。企業によっては、効率性や損益分岐点、債務償還能力も候補となります。必要な経営分析は企業によって異なります。最適な指標を活用すれば、自社の経営状況を客観的に判断しやすくなるでしょう。

4.管理会計に必要なスキルとは?どんな資格がある?

管理会計を取り入れるのであれば、身につけるべきスキルがあります。本章では主にどのようなスキルが必要なのか、どのような資格があると有利なのかを解説します。

4-1.管理会計に必要なスキル

管理会計において、必要とされるスキルは以下の3つです。

  • 原価管理
  • 財務会計
  • 経営視点

管理会計では、使用した費用を把握し、詳細な分析が必要とされます。
どのような部分にコストがかかっているのか、適切なコストがかけられているのかを把握しなければなりません。そのため「原価管理」は、重要なスキルです。外部に向ける企業の財務状況もしっかり把握し、先々の予測が立てられる「財務会計」のスキルも必要とされるでしょう。
また、経営判断に役立てるには、経営者の知りたい会計情報の把握が必要なため「経営者視点」のスキルが必要です。財務データを把握して解釈することで、企業の財務状態によってどのような影響が出るのかを理解できるスキルも求められるでしょう。

このように経理として管理会計する場合、簿記だけでは難しいため、新たなスキルの習得は必須です。

4-2.管理会計に関する資格例

管理会計に特化した資格は多くはありませんが、実務に役立つ知識を習得できる資格が複数あります。そこで本章では、管理会計に必要な能力や知識が得られる資格について解説します。

4-2-1.管理会計検定

管理会計検定とは、日本管理会計教育協会(JEIMA)が行う、日本唯一の管理会計に関する資格です。経営的な知識の習得ができるため管理会計スキルを高めたい方に最適です。
2級は、管理会計の基礎や概念の理解を目的としており、全て選択式の問題が出題されます。1級は記述式の問題もあり、より実務に近い内容です。管理会計検定1級に合格することによって経営戦略・組織運営・マーケティングといったより専門的な知識が問われる「認定管理会計士」の受験資格が手に入ります。
試験内容は、米国管理会計協会(IMA)と日本管理会計学会より、最先端の会計理論と研究成果を元に作られています。

出典:https://jeima.or.jp/qualifications/

4-2-2.認定管理会計士

認定管理会計士は「管理会計検定」1級に合格しなければ、受験資格が与えられません。
管理会計検定で学んだ知識を土台に、さらに専門的な知識と実務で起こり得る物事に対しての判断ができるかどうかの能力がみられます。

ファイナンス全般の知識など実践的な経営の知識が問われるハイレベルな資格のため、経営視点でも役立つ知識の習得が可能です。そのため、試験問題は選択式や記述式ではなく、4問ほどの論述問題に加えて1時間ほどの面接が行われます。認定管理会計士の試験は合格率16.7%ほどと、難易度は高めです。さらに管理会計を極めたい場合は、米国公認管理会計士(USCMA)を受験しましょう。

出典:https://jeima.or.jp/qualifications/

4-2-3.米国公認管理会計士(USCMA)

米国公認管理会計士(USCMA)は、管理会計のなかで米国公認会計士(USCPA)と並ぶ権威ある国際資格です。最高財務責任者(CEO)の多くが保有している資格でもあり、保有することによって財務においてのプロフェッショナルと見なされるでしょう。

試験は、パート1とパート2に分かれています。
パート1は「財務計画・業務管理と分析」、パート2は「戦略的財務管理」です。試験内容は全て英語のため、ビジネス英語の習得が必要です。そのため、英語力が備わっている証明にもなるでしょう。

出典:https://www.tac-school.co.jp/kouza_uscma/uscma_sk_idx.html

4-2-4.その他

その他に役立つ資格として「ビジネス会計検定試験」と「日商簿記検定(簿記検定)」が挙げられます。
ビジネスか会計検定試験は、財務諸表の理解力を養うための検定試験です。大阪商工会議所と施工商工会議所が主催しています。管理会計の資格ではありませんが、2級習得により管理会計に通ずる基礎知識や財務諸表を分析するための知識が得られます。すでに簿記の資格を取得している場合や経営者目線の分析力を習得したい場合には、特におすすめです。また、2級までは選択式のため、比較的取得しやすいでしょう。1級の合格率は14%前後ですが、習得すると企業の戦略や課題、成長を読み取るなど管理会計に必要な能力が得られ、実践可能である証明にもなります。

出典:https://www.b-accounting.jp/

日商簿記検定(簿記検定)は日本各地の商工会議所が主催する検定です。財務関連の資格試験としては、一番ポピュラーな資格試験ともいえます。財務諸表が読めるようになれば、経営分析にも役立ちます。
試験内容は、営業活動を記録する「工業簿記」と社外取引を記録する「商業簿記」です。3級は基礎知識、2級は財務状況を読み取り分析する能力、1級では企業会計に関連する法律に基づく経営管理と分析する能力の習得が必要です。管理会計のスキルを上げる目的であれば、原価計算の基礎がある2級以上を狙いましょう。
1級に合格することにより、税理士の受験資格を得られます。合格率10%以下と難易度は高めですが、税理士として活躍するために必要な知識が習得できます。

出典:https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping

5.管理会計の導入・運用改善なら「メリービズ経理DX」にご相談ください

管理会計を導入・運用すれば、スピーディな経営判断ができ、コスト削減や正確な評価を行うことにも役立ちます。ただし、管理会計を導入する際、十分な知識がある人材を確保しなければ、現場に大きな負担をかけることになるでしょう。また、リソース不足の状態で管理会計を取り入れてしまうと、小さな問題が大きな問題となってしまう可能性があるため、人材確保は非常に大切です。管理会計の導入を検討しているものの、人材不足でお悩みの場合は、最新の経理ノウハウを持つプロフェッショナルが揃う「メリービズ経理DX」の活用がおすすめです。

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管理会計についてまとめ

管理会計とは、任意で行う社内用の会計のことです。管理会計を導入、運用していくことで、経営判断が正しく迅速に行えます。また、管理会計により経営状況の可視化が実現すれば、コスト削減に繋がったり従業員に具体的な指示や評価を納得度の高い形で与えられたりできます。

このように、管理会計を導入するメリットがあるにもかかわらず、リソース不足で導入できずにいる企業もあるでしょう。導入できずにお悩みの方は、ぜひ『メリービズ経理DX』にご相談ください。

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