決算を早期化するには?決算の種類や単体決算・連結決算の事例も紹介
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決算は企業の一定期間における資産や負債、純資産の状況を確認するための業務で、企業や国、地方公共団体などは決算が義務付けられています。決算期間で区切られているのが特徴であり、期末に行う本決算のほかに、半期ごとに実施する中間決算、当期を分割して実施する四半期決算などがあります。本決算は義務ですが中間決算や四半期決算は任意です。決算業務は資産や負債の棚卸、決算整理の仕訳、決算書作成などさまざまな工程があり、毎回経理担当者、経理部長が実施する業務です。
本記事では、決算を早期化するメリットや課題点、早期化を実現させるポイントなどについて詳しく解説します。
1.決算早期化の目的・メリット
決算を早期化すると、経営判断の精度や速度が上がる、経理部門の業務の負担を減らせるなどのメリットがあります。詳しく解説します。
1-1.経営判断の精度・速度向上
決算の早期化が実現できれば、自社の正確な売上や利益を素早く把握できます。
決算を早期化することで当期の事業利益などをスピーディーに確認することができ、次に向けた精度の高い経営戦略を迅速に立てられます。また、決算の早期化は投資家や金融機関へ正確な情報を速やかに提供することにもつながります。
1-2.経理・経営企画部門の業務負担軽減
決算の早期化は、経理や経営企画部門の業務負担の軽減を実現できます。東京証券取引所によると、2022年3月期に決算を発表したのは東京証券取引所に上場している2,288社の企業で、決算業務に要した日数は平均で40.3日でした。決算業務は1か月以上前から取り掛かる必要があります。
決算を早期化すれば、経理や経営企画部門の繁忙期も短期化し、従業員の残業時間の削減も実現できるでしょう。決算業務に割く時間を減らせれば、その分ほかのコア業務に取り掛かれます。また、担当部署の働き方改革の促進にもつながります。
2.決算の種類
決算には、会社の数や期間によってさまざまな種類があります。それぞれ詳しく解説します。
2-1.会社の数による決算の種類
決算は、対象の会社の数によって2つに分類されます。
1社だけの決算ならば、個別の会社の業績を確定する単体決算、親会社以外に子会社や関連会社があり、それらすべての決算をまとめて行う場合は連結決算となります。
2-1-1.単体決算
単体決算は、1社のみの決算を行う場合に使われるものです。主に中小企業で、単体決算を実施されています。
単体決算は、1社のみの場合に適していますが、複数の子会社や関連会社を持つ、いわゆる大企業で実施すると、親会社と子会社間の取引も一般的な別会社の取引と同じく計上しなければいけません。そのため、決算時に数字が合わない点や不透明な部分が出てくるので、決算の帳尻合わせをしたり、不透明な点を利用して売上高を調整ができてしまうといった問題が出てきます。
2-1-2.連結決算
連結決算は、親会社をメインに、子会社や関連会社の業績も合わせて行う行決算です。
連結決算は同業他社との比較がしやすいため、グループ企業の企業価値や特徴を調べる際に役立ちます。単独決算では、グループ企業間の取引実績を除外することができるため、グループ全体の業績を正確に示すことが可能です。親会社から支配されていると判断できる会社は、すべて「子会社」として業績を連結できます。また、親会社の影響下にあるとみなされる会社では、持ち分法を用いて「関連会社」として数字を計上します。上場企業の場合、連結決算による決算作成が必要です。
2-2.期間による決算の種類
期間ごとに区切って行う決算には次のようなものがあります。
- 本決算
- 中間決算
- 四半期決算
- 月次決算
1つずつ解説します。
2-2-1.本決算
本決算とは、企業の1年間の経営成績と財政状態を示す決算で、全ての事業者の義務です。年次決算とも言われます。
1年間の区切りは企業によって異なり、任意で決められます。たとえば、4月1日から新たな事業年度が始まる会社の場合は、翌年の3月31日までの1年間のすべての取引を3月末日の翌日から集計して決算書を作成します。本決算の発表は、決算書作成の1か月〜1か月半後に実施する企業が多く、決算報告書として3つの書類を提出するのが一般的です。
- 貸借対照表:会計期間の資産、負債、純資産を一覧にしたもの
- 損益計算書:会計期間中の収益と費用を記したもの
- キャッシュフロー計算書:会計期間中のキャッシュフローの状態を財務、営業、投資の区分に分けて表示したもの
2-2-2.中間決算
中間決算とは、年度の中間期までの決算をとりまとめたものです。第2四半期決算ともいいます。事業年度の中間地点での財務状況から現状を把握して、社内外に発表し、経営状況や改善点を明確にします。中間決算をすることで経営方針の転換を素早く行えるうえ、支払う税金の予測も立てられるため、資金面の戦略も立てやすくなる点がメリットです。
2-2-3.四半期決算
四半期決算は、1年を4つに分割して3か月ごとの業績を任意で社内外に報告するためのものです。
事業年度の最初の3か月を第1四半期決算、次の3か月を合わせて半年間を中間決算または第2四半期決算、その次の3か月までの9か月間を第3四半期決算、1年間の決算が本決算と呼びます。本決算は第4四半期決算ともいいます。
2-2-4.月次決算
月次決算は毎月ごとの業績の把握を目的として行われる決算で、本来申告の義務はないものです。
任意ではありますが、大企業や取引先が多い会社などは、財務状況を月毎に細かく把握することでスピード感を持って業績の見直しができ、資金面の戦略を立てることが可能です。月次決算は、すべての企業に義務付けられているわけではありません。繰延資産償却をしない会社や減価償却資産がない、または少額の会社、消費税の納付がない会社などは月次決算の必要性は低いでしょう。
3.決算の早期化が難しい理由
決算の早期化が難しい理由は単体決算、連結決算ともに要因が異なります。それぞれ詳しく解説します。
3-1.単体決算早期化の阻害要因
それぞれの個々の会社の決算を行う単体決算では、勘定科目の残高確定に時間がかかる、入力業務の効率化ができないなどの問題点があります。
3-1-1.勘定科目の残高確認に時間がかかる
決算業務を進めるためには、勘定科目の金額を確定する作業が不可欠です。
勘定科目の金額確定には日々の取引の納品書や請求書が必要ですが、「他部署の社員が経理処理を後回しにしてしまう」、「各部署の承認フローで止まっている」などの理由で、これらの書類が期日までに集まらずに決算まで時間がかかるケースが多く見られます。
また、紙の書類を使って勘定科目の残高確認を行う場合、入力のし直しや印刷、送受信などに時間を取られます。そのため、決算を早期化するためには締め日を早めに設定したり、必要書類を電子化したりする対策を取るとよいでしょう。決算に関する書類の電子化は義務付けられているため、早めにペーパーレス化を進めることで決算の早期化も期待できます。
経理業務のペーパーレス化について詳しい内容は以下をご覧ください
3-1-2.入力業務が効率化されていない
決算に必要な書類を揃えても、紙の書類が多い場合手入力する必要があり、入力に時間がかかってしまいます。特に本決算のときは書類の数も多いため、決算業務の前の作業に大幅な時間を取られてしまうことも少なくありません。また、社内に導入している既存の会計システムが使いづらいものだと、さらに時間がかかる場合があります。システムの処理能力が遅い、システムごとのデータ連携ができていないなどの問題があると、決算の際の業務が増えてしまいます。
3-2.連結決算早期化の阻害要因
連結決算では親会社と子会社、関連会社などの決算をすべてまとめるため、その過程で大きな阻害要因があるケースが多いです。
たとえば、会社ごとの方針や勘定科目が揃っていない、連結パッケージへの入力ミスが多いなどが考えられます。
3-2-1.会社ごとに方針が異なる
連結決算では、親会社、子会社、関連会社を含むグループ全体で決算を行います。それぞれの個別の決算に問題がなくても、親会社が関連会社の財務諸表をまとめる際に阻害要因が発生することもあります。
たとえば、連結決算業務の業務フローやルールをマニュアル化し、双方で共有できていないと必要な書類のフォーマットが異なるなど、連携がうまくいきません。再度、決算に必要な個別財務諸表や取引明細、未実現損益計算書類などの書類をすべて集め直す必要が出てきます。
連結する子会社や関連会社が多いほど、決算前の業務量が増えて時間がかかってしまいます。
3-2-2.会社ごとに勘定科目体系が異なる
子会社や関連会社がそれぞれ異なる勘定科目や取引先コードを使っている場合、連結決算業務で確認や調整などを行わなければいけません。
勘定科目や取引先コードは、多くの場合それぞれの会社で任意に付けられます。そのため、親会社と子会社や関連会社で、別の勘定科目や取引先コードを用いて管理しているケースもあります。書式や項目などが統一されていない場合、決算書を作成する際に確認や調整などの作業が必要です。また、親会社とそれぞれの会社で会計システム自体が異なる場合は、システム上での調整が難しくなるため、手作業による確認や入力が必要になることもあります。
3-2-3.連結パッケージへの入力に誤りが多く、修正が発生する
連結パッケージの入力ミスが多いと修正する手間が発生します。
連結パッケージとは、子会社や関連会社などのグループで共通のフォーマットのことであり、連結財務諸表を作成するために必要な情報を収集することを目的としています。連結パッケージを利用すれば、個別財務諸表の合算がスムーズになります。
ただし、この連結パッケージへの入力ミスがあると都度修正が必要になります。。他部署の業務と兼任している担当者や会計知識の少ない担当者が入力作業を行う場合もあるため、連結パッケージはなるべくシンプルで誰もが使いやすい仕様にするとよいでしょう。また、経理担当者の研修や教育などの体制を整えることも大切です。
4.決算早期化のポイント
決算を早期化するためにはいくつかのポイントがあります。
- システム・ツール導入により業務を効率化する
- ペーパーレス化を推進する
- 業務マニュアルを整備する
- コンサルティングやアウトソーシングサービスを活用する
1つずつ詳しく解説します。
4-1.システム・ツール導入により業務を効率化する
決算の早期化を目指すなら、システム・ツールを導入し、経理業務の作業効率向上をはかりましょう。業務効率化に役立つ「OCR」や「RPA」なども選択肢の一つです。会計ソフトを導入していない場合や活用できていない場合は、新規導入、利活用の検討を推奨します。
OCRとは、紙の文書をデータ化できるツールです。スキャナーで読み込んで、紙に書かれている文字をデータ化し、パソコンで扱えるようにします。近年は、AI技術を搭載したAI-OCRが登場し、精度が高くなったことで手書きの文字の読み取りミスも減りました。紙文書をデータ化することで、システム上で管理できるだけではなく、PC上での検索もスムーズに行えます。RPAは手順の決まった単純な定型業務を自動化できるツールです。日々の業務で利活用できる場合もあるでしょう。
また、会計ソフトの活用は、決算業務の早期化に不可欠です。データ入力の自動化や他のサービスとのデータ連携を行うことで、データをリアルタイムに収集できるようになります。
このように、システム・ツールを利用することで、決算の早期化にも役立つでしょう。
経理業務のデジタル化、会計システムの導入メリットについては、こちらのコラムをご覧ください。
4-2.ペーパーレス化を推進する
決算に必要な書類をペーパーレス化することで、早期化を目指せます。
決算業務に必要な請求書や納品書、経費に関する書類など各部署から紙で集める場合、書類の送付、受け取りだけでも時間がかかります。ペーパーレス化を導入することで、書類の修正や差し戻しが必要な場合でもデータをやり取りするだけなので、作業の効率化をはかれます。
4-3.業務マニュアルを整備する
決算業務に関するマニュアルを整備することも重要です。特に、連結決算で子会社や関連会社の勘定科目や取引先コード、書類作成のフォーマットなど会計方針が異なる場合は、早めに決算のマニュアルを作成し共有してください。
本決算、中間決算、四半期決算それぞれの業務の流れやフォーマットなどがひと目で分かるマニュアルがあれば、各会社で異なる担当者が決算業務を行っても大きな齟齬を出さずに進められます。
4-4.コンサルティングやアウトソーシングサービスを活用する
決算業務は、経理の専門的な知識や経験のある人が行う方が早期化を目指せます。専門スキルの高い人材の獲得も有効ですが、即戦力のある人の採用は難しい面があります。その際は、アウトソーシングサービスで外部の人材活用も視野に入れるとよいでしょう。
アウトソーシングサービスなら、決算業務はもちろん、既存の経理業務やノンコア業務のアウトソーシングなどを依頼できます。また、コンサルティングサービスを利用すれば、業務フローの整備や、決算の早期化に必要な専門性の高いアドバイスももらえます。
5.メリービズが決算を支援した事例
決算業務はアウトソーシングやコンサルティングに頼るのが難しいと思われがちです。ここではメリービズが決算業務を支援した事例をいくつか紹介します。
5-1.【伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社様】
月次の経理業務から、連結決算・IFRS対応など高度な会計業務支援まで。メリービズ「経理DXコンサルティング」の活用法
<課題・背景>
・内部統制強化や法改正対応により業務量が増加。日常業務とプロジェクト業務の両立が困難
・キャッシュフロー計算書作成、IFRS調整業務などが決算期に集中。残業時間が危険水域へ
・連結対象グループ会社が100社を超えるなか、短期間かつ少人数での決算書類作成が必要<導入効果>
・定常的な経理業務の安定化、現場の負荷軽減、社内から好意的な意見を寄せられる状態に
・不安視していた決算業務の確認点検作業に第三者の観点を組み込み、業務の正確性が向上
・業務の「脱属人化」に成功。作業プロセスが効率化され、業務工数の大幅な削減に成功
決算の早期化についてまとめ
決算の早期化は経営判断の精度や速度向上、経理部門の業務の効率化などのメリットがあります。しかし、単体決算、連結決算ともに様々な要因があるため、すぐに対策ができない企業も少なくありません。
人材確保や育成が難しい場合は、即戦力となるアウトソーシングの検討もおすすめです。経理のアウトソーシングの実績が豊富なサービスであれば、自社の課題を明確にし適切なアドバイスや対策を提案してくれるでしょう。
メリービズのアウトソーシングサービス「バーチャル経理アシスタント」の詳細はこちら
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また、業務フローの改善や業務効率化をすることで決算の早期化を目指す場合は、専門のコンサルティングサービスの検討も有用です。『メリービズ経理DX』では、現状のヒアリング・課題の棚卸を丁寧に行い、業務の設計からペーパーレス化の導入・運用など幅広く課題を解決いたします。
スタートアップから中堅・中小企業、大企業まで多くの支援をしてきた実績がありますので、決算の早期化についてもぜひお気軽にご相談ください。
経理DXの詳しい内容についてはこちらをご覧ください。
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