月次決算を早期化するには?遅れる理由と早期化のポイント・事例を解説

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月次決算に法的な義務はありませんが、メリットもあり、導入している企業は少なくありません。特に月次決算を早期化することで、よりスピード感を持って経営状況の把握や改善に繋がるなど、プラス要因にもなります。
ただし、企業によっては月次決算を期日通りに締めることが難しかったり、担当者の業務負担が強い場合もあるでしょう。

本記事では月次決算が遅れる理由と、早期化させるためのポイントを詳しく解説します。

1.そもそも月次決算とは

月次決算は、売上高や営業成績、財政の状況をひと月ごとに確定させる、「1ヶ月ごとに行う決算業務」です。年次決算は、1年ごとに決算を行い、決算書(財務諸表)を作成し、経営状況を把握します。

会社法により全ての会社に義務付けられているのは、年次決算です。月次決算には法的な義務がないため、会社によっては月次決算を導入していない場合もありますが、スピーディーな経営判断をするために、多くの企業で実施されています。

2.月次決算早期化のメリット

月次決算早期化のメリットは、主に3つあります。

  • 経営指標をタイムリーに把握することにより、柔軟に対応できるミスを早期に発見し対応できる
  • 融資を受ける際のプラス要因になる

それぞれ詳しく解説します。

2-1.経営指標のタイムリーな把握により経営判断の精度・速度向上が実現できる

経営状況の変化に伴い、タイムリーな判断が大切です。ただし、判断材料がなければ正しい経営判断ができません。そのため、月次決算によって売上高や営業成績だけではなく、売上債権の回収も含めた財政状況の把握が必要です。

月次決算により、月ごとに経営の現状を確認・把握することで、適切な経営判断をスピード感をもって行えることでしょう。

2-2.業務のミスを早期に発見・対応できる

たとえ注意深く気をつけていても業務上のミスを100%防ぐことは難しいため、ミスした際に早期発見してリカバリーすることが非常に大切です。
月次決算を行うことで、日々の会計業務で起こるミスを早期に見つけることが可能になるだけではなく、余裕を持って修正でき、ミスの原因を探ることもできるため再発防止の対策がとれます。
また、たとえ不正な会計処理があった場合でも、素早い対応を期待できます。

2-3.金融機関からの信頼向上につながる

金融機関から融資を受けやすくするためには、「信頼を得る」ことが重要です。金融機関が融資を検討する場合、融資候補の企業の経営状態や財政状態、成長率などをみて判断します。

また、金融機関によっては直近の経営状況の確認のために月次決算の資料提出を求める場合もあります。月次決算を日頃から行っていれば、金融機関が必要とする判断材料を迅速に提出できることで、早期に融資を受けられる可能性が出てくるでしょう。

3.月次決算が遅れる理由

月次決算が遅れる理由は主に3つあります。

  • 証憑の回収や、申請・承認処理に時間がかかり、決算業務に取りかかれない
  • 業務フローが未整備など、経理業務の効率化が進んでいない
  • 手入力、紙での処理など、物理的な業務が多く、工数が膨らんでいる

それぞれ詳しく解説します。

3-1.証憑の回収や、申請・承認処理に時間がかかり、決算業務に取りかかれない

月次決算を行うためには、請求書や納品書のように、売上や仕入れの確定を証明するための証憑の回収や申請が必要ですが、取引先からの回収が遅くなる場合も珍しくありません。期日までに社内の担当者に届かず、担当者が処理を始める日がすでに期日を超えているような場合もあります。

たとえ担当者が迅速に証憑処理をして上司に申請したとしても、次は申請の承認処理の期間が必要です。ようやく経理にたどり着いたとしても、途中工程にプリントアウトやダブルチェックなどの手作業が多いと書類の紛失などのミスも起こりやすく、月次決算が遅れていきます。

3-2.業務フローが未整備など、経理業務の効率化が進んでいない

再度、業務フローを見直し、業務の優先順位の確認や不要な承認工程などがないかのチェックと、基準となる理想の業務フローの設計をしましょう。

たとえば、請求書の仕訳起票の際、紙の帳票に転記してから、その情報をもとに会計システムに記載している場合があります。その場合は、会計システムに直接入力したほうが、二度手間にならず、業務を短縮(効率化)できます。紙の帳票で管理する必要性がなければ、このように業務の手順をカットしたり、フローを変更するなどして、効率化していきましょう。
こうした業務フローの見直し、適正化を行えれば、月次決算を締める期日も前倒すことが可能です。

3-3.手入力、紙での処理など、物理的な業務が多く、工数が膨らんでいる

月次決算を円滑に進めるには、紙の書類を印刷して、ハンコを押して承認という物理的なフローはできる限り少なくすることを検討しましょう。
手作業が多ければ多いほど、費やす労力も時間も増えていき、ミスの可能性も増えます。

システムを導入しデジタル化することで、一定の品質を保ちつつ業務を最適化できるでしょう。しかし、今までアナログでやってきたことをいきなり全てデジタル化することは簡単ではありません。
またITに関する詳しい知識がある社員がいないなどの状況から、新しい業務フローが浸透しないことも多いでしょう。そのような場合には、専門的な知識を持つ経理アウトソーシング会社の活用を検討することも手段のひとつです。

経理業務のクラウド化については、こちらの記事にて詳しく解説しています。
経理業務のクラウド化とは?メリット・デメリットからサービス導入手順まで詳しく解説

3-4.人材が不足している

経理業務を手入力や紙ベースなどのアナログ体制で行っている企業は業務が属人化しやすく、担当者しか把握できていない場合がほとんどです。特定の担当者しか業務を行えない状況ではイレギュラーな対応が難しく、何かあった際に大きく支障がでる可能性があります。

そのため、システムを導入してデジタル化を試みても、知識を持って扱える人材がいなければ混乱を招く可能性も出てくるでしょう。

また、月次決算など経理業務の効率化だけではなく法改正にも対応するためには、デジタル化が望ましいです。しかし、デジタル化に対応できる人材がおらず、先送りにしてきた企業は少なくありません。
そのような状況から、コンサルティングサービスに相談する企業が増えてきました。

実際に『メリービズ経理DX』を利用し、クラウド化を成功させた企業の事例をご紹介します。もしよろしければ、ご参考になさってください。

 

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4.月次決算を早期化するポイント

月次決算を早期化するポイントは経理業務を属人化させずに、多くの人が対応できるシステム作りが大切です。そのために必要な、明確でわかりやすいルールや業務の最適化について、詳しく解説します。

4-1.社内ルールを明確にし、期日までの対応を徹底させる

月次決算を早期化するポイントは、社内のルールを明確にし、徹底させることです。
特に月次決算で大切になるのが、各部門ごとに行う請求書や伝票の処理を期日どおりに完了させることです。そのため、各部門の請求書や経費精算などの伝票をいつまでにどのような形で提出すべきかをしっかりと決め、必要があればマニュアルを作るなどで啓蒙することを推奨します。

決めるだけで終わらず、経理はもちろん部門長から担当者へのリマインドなども徹底することで、早期化に繋がります。

4-2.業務フローを可視化して再設計する

業務フローを可視化すると、いつまでにどのようなことをやるのかが明確になり、担当者以外でもスムーズに作業することが可能になります。

経理業務は定期的なメンテナンスを行わないと、過去のルールに則った業務フローとなり、現行業務とズレが起きる場合があります。効率化できる可能性があっても、改善の余白が残っている場合が多いものです。
毎日の予定や日々届くメールの確認、請求書や領収書をファイルし、仕訳登録するまでの工程を書き出した後、工程ごとに、担当者や期限、作業内容について書き込みましょう。
書き込んだ業務フロー内容に、無駄な工程や余分なコストが発生していないか、不足しているプロセスはないか改めて確認をし、実は不要になっている業務があれば、カットしてみてください。

4-3.ペーパーレス化やデジタル化を推進する

発注書や請求書などの書類を一元管理できるシステムを取り入れることによって、タイムリーにデータを取り込み、確認ができるため効率よく業務を行えます。

ペーパーレスにすることで印刷といった工程も少なくなり、社員の負担やミスも減らせるでしょう。また、紙の書類においても、書類を読み込むだけで自動で仕訳まで完了するツールなどがあるため、自社にとって最適なツールを探してみましょう。

4-4.月次決算業務をアウトソーシングする

経理のアウトソーシングとは、経理や会計に関する業務を代行するサービスを指します。企業の状況に合わせた内容で委託できるため、自社が必要とする経理業務を整理して依頼しましょう。

経理のアウトソーシングで委託可能な内容は、主に次の5つです。

  • 帳簿・仕訳の入力
  • 経費の精算
  • 請求書の発行・売掛金管理
  • 受領請求書対応・費用・買掛の管理
  • 月次決算業務

その他にも、経理のアウトソーシング会社によっては、企業の課題に合わせて必要な業務の提案や改善案の提示をしてもらえる場合もあります。

また、決算フローの見直しや再設計も行ってもらえるため、業務の最適化も期待できるでしょう。

経理の担当者以外でもタイムリーに売上や仕入れなどの情報が確認しやすくなれば、不正防止にもつながるでしょう。

月次決算の早期化についてまとめ

月次決算は、マニュアルや社内ルールをしっかりと決めたうえで、対応することが大切です。また、決算業務の遅延につながる紙の書類を減らして月次決算を早期化するためには、ペーパーレス化やデジタル化によりタイムリーに対応できることが必要です。

通常業務と並行しながら、決算業務の早期化を進めることは難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。その際は、ぜひ最新の経理ノウハウと豊富な実績を持つ「メリービズ経理DX」にご相談ください。日々の業務改善を進めながら、月次決算を早期化しましょう。

 

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