経理業務のペーパーレス化を進めるには?方法・流れや成功事例を紹介

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電子帳簿保存法の改正やリモートワークの推進などにより、多くの企業で経理業務のペーパーレス化を積極的に検討しています。ペーパーレス化の促進は、業務の効率化や生産性の向上、コスト削減などの多くのメリットがある一方で、導入費用がかかること、従来の業務フローの大幅な変更に適応する必要がある点が課題です。本記事では、ペーパーレス化の方法や流れを、具体的な成功事例を交えながら詳しく解説します。

1.経理業務のペーパーレス化が注目される理由

経理業務のペーパーレス化が注目されるのは電子帳簿保存法の改正や、新型コロナウイルスの影響によるリモートワークの推進などがあげられます。

1-1.電子帳簿保存法の改正

2022年1月1日から電子帳簿保存法の改正法が施行されました。電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿の書類の一部または全部を電子データ保存できることを認める法律です。改正前は、3万円以上の領収書や契約書は電子データ保存が認められておらず、紙による保管が必要でした。

しかし、法改正によってすべての領収書や契約書の電子データ保存が可能になりました。また、電子署名不要、スマートフォンやデジカメなどで撮影した領収書も電子データとして保存ができるようになり、経理業務に関する書類は比較的ペーパーレス化しやすくなっています。そのため、この法改正を機に経理業務のペーパーレス化に注力する企業が増えてきているのが現状です。

なお、電子帳簿保存法については以下の記事で詳しく解説しています。

1-2.コロナ禍におけるリモートワークの推進

新型コロナウイルス感染症の拡大により、多くの企業でリモートワークを推進する動きがあります。以前は、紙での保管や印鑑での承認が必要なため、出社しなければ業務を行えない企業も少なくありませんでした。
電子帳簿保存法改正によって電子保存に関する一部が緩和され、経理業務でもペーパーレス化を導入しやすくなりました。今後は、リモートワークを必要とする従業員が増え、企業もその必要性を感じ始めたことにより更にペーパーレス化が進むと見られています。

2.経理業務をペーパーレス化するメリット

経理業務をペーパーレス化することでどのようなメリットがあるのか、具体的に説明していきます。

2-1.コスト削減に繋がる

経理業務のペーパーレス化を進めると、領収書や請求書などに使っていた紙や印刷代、書類を取引先に送付する郵送代などのコスト削減につながります。また、国税に関する書類は、それぞれ保管期間が定められており、税務に関する書類は一般的に7〜10年間保管しておかなければなりません。紙で保管する場合は、保管スペースも必要になります。さらに、保管期間が過ぎた書類の廃棄にもコストが必要です。

これらの税法上必要な書類をすべてペーパーレス化して電子保存ができれば、用紙やインク代、郵送費などを大幅に減らせます。

2-2.業務効率化や生産性向上に繋がる

紙の書類を使用する場合、必要なデータを探すのに保管場所まで行き、種別や月別などにファイリングした書類の中から業務に関連する書類を見つけなければいけません。経理文書をペーパーレス化すれば書類を電子で整理できるため、業務の効率化をはかれます。

ファイリングも紙の書類を保管する際に必要な作業です。また、関連部署や担当者と共有するためには書類を印刷して配布するなどの手間がかかっていました。ペーパーレス化すればすべて電子で保存ができ、必要な書類の検索や書類の共有もワンクリックで済むので業務の効率化が期待できます。ファイリングや印刷などの作業も必要なくなるため、生産性の向上も期待できます。

2-3.リモートワークの推進につながる

経理業務を従来の紙ベースで行う場合、出社をして書類を使用しなければいけません。しかし、電子保存すれば、社内ではなくどこからでも必要なときに必要な書類にアクセスして業務が可能です。

また、紙の書類では押印しなければいけませんでしたが、電子化すれば必要ありません。ペーパーレス化が進むことで、場所や時間に捉われることがなくなるため、多様な働き方も可能です。居住地の制限なく優秀な人材の確保がしやすくなったり、出産や育児、介護などライフステージの変化による従業員の離職を防ぐメリットもあります。

2-4.セキュリティ対策がしやすくなる

紙ベースの書類よりも、電子化した書類の方がセキュリティ対策に取り組みやすい点も大きなメリットです。紙の書類の場合は、保管場所へ入れば誰でも資料を閲覧したり持ち出せてしまいますが、電子化すれば重要なファイルは部署や担当者ごとにアクセスの権限や閲覧制限を設けられます。
また、サーバーのトラブルやパソコンが故障した場合でも、書類を電子化していればバックアップから復元が可能です。紙の書類をそれぞれの担当者が持ち歩く場合、紛失や置き忘れなどの人的ミスのリスクが高まりますが、電子化してあればそれらのミスも軽減できます。文書を電子化することで、より安全に機密文書を取り扱いできるでしょう。

3.経理業務をペーパーレス化するデメリット

経理業務をペーパーレス化する際には、初期費用がかかる場合もあります。また、企業の状況によっては社内で新しい業務フローに慣れるための研修や、育成が必要になることもあります。

3-1.導入・運用にコストがかかる

経理業務をペーパーレス化する場合、導入や運用にコストが必要になるケースがあります。ペーパーレス化のためのシステムだけではなく、システムを快適に使用するためにネットワーク環境の整備をしたり、電子保存のためのセキュリティ対策を強化するためにソフトウェアを導入したりするケースもあるでしょう。
また、ペーパーレス化するにあたって、従来の紙の書類を電子化するための膨大な人的要員や時間も必要です。さらに、新たな電子書類を扱う業務フローを構築するためにも一時的なリソースが不可欠です。

ただし、中長期的に見ると、ペーパーレス化が義務付けられていることや、コスト削減、業務の効率化などのメリットに比べれば、初期の導入コストよりもメリットの方が大きいといえます。

3-2.関係者の巻き込みに苦労する可能性がある

経理業務のペーパーレス化を検討する際に、社内の反対意見を持つ部署や担当者を説得する必要が出てくる可能性があります。
これまで紙媒体で管理していたものをペーパーレス化すると、従来の業務フローが大幅に変わります。企業によっては、ITに不慣れな従業員が多かったり、従業員の間でITに関する知識に格差があるなど、ペーパーレス化への賛同が得られない場合があります。
「紙の書類の方が複数の資料を並べて作業できる」「パソコンやタブレットの操作がしづらい、または画面が見づらい」などの理由で、ペーパーレス化に反対する従業員が出ることも予想されますが、事前の研修やシステム操作方法のマニュアル作成などを行うことで改善は可能です。

経理業務をペーパーレス化する際には、どのようなメリットや必要性があるのかをまず説明し、従業員に理解してもらうことが重要です。また、ペーパーレス化に伴う教育や研修制度、業務フローなどもあらかじめ整備しておきましょう。

3-3.新しい業務フローに慣れるまで時間がかかる場合がある

経理業務をペーパーレス化すると、今までとは業務フローが大きく変わるため、ペーパーレス化に関係する全従業員がすぐに通常と同じ業務をこなせるとは限りません。システムの整備だけではなく、従業員へのITリテラシーの強化や育成が必要です。ITに慣れていない従業員の場合、新たな業務を習得するまでに時間がかかるため、業務の効率化を実現するまでに想定していた以上のコストや労力が必要になることもあるでしょう。スムーズに経理業務のペーパーレス化を進めるためには、社内の経理および関連部署に対して、ペーパーレス化に伴う事前の研修や教育を手厚くするなどの工夫が必要です。

4.経理業務をペーパーレス化する方法・流れ

経理業務のペーパーレス化を検討する際の、具体的な流れを説明します。

4-1.ペーパーレス化の目的を明確にする

まずは、ペーパーレス化の目的を明確にすることです。
電子帳簿保存法改正により、2024年から帳簿や書類を電子データで保存することが義務付けられています。しかし、経理業務のペーパーレス化を進める前に、自社でなぜ今ペーパーレス化する必要があるのか、その意味や目的を明確にし、関係各所に周知をし、理解してもらうことが大切です。業務の効率化、テレワークの推進、コスト削減、セキュリティ強化など、ペーパーレス化を推進するさまざまな目的があります。目的を明確にすることで、ペーパーレス化したい書類や適したシステムの選定などが絞られます。また、改善できる業務も具体的に試算できます。

4-2.ペーパーレス化する対象・優先順位を決める

目的を明確にしたら、ペーパーレス化する対象の業務や優先順位を決めましょう。まずは、既存業務の業務フローを見直してみてください。
経理業務すべての書類を一度にペーパーレス化すると、トラブルが発生したときに原因の究明や修復に時間がかかってしまう可能性があります。最初はスモールスタートで徐々に範囲を広げてペーパーレス化を進めていくとよいでしょう。

4-3.利用するツール・システムを決める

ペーパーレス化の目的と優先順位に合わせて、自社に適しているツールやシステムを決めましょう。システムを選ぶときのポイントはいくつかあります。

  • 改正電子帳簿保存法の保存要件を満たしたもの
  • 自社に必要な機能が搭載されているもの
  • 従業員が使いやすいもの
  • 初期費用およびランニングコストが適切なもの
  • 社内の既存システムと連携できるもの

電子保存が義務化されるため、電子帳簿保存法の改正で変更された保存要件を満たすものを導入しましょう。また、目的に合った機能が搭載されているかも確認してください。経理担当者と関連部署の従業員が操作しやすいツールであることも重要なポイントです。これらを満たしたツールやシステムの中から、コストが適切で社内の既存システムや、今後導入する可能性がある業務やツールと連携できるものを選びましょう。

4-4.業務フロー・ルールを構築する

業務フローは、ツール選定の前に設計することが多いので、必ず、管理者だけで決めずに関連部署の担当者の意見を聞き、業務フローやルールを構築しておきましょう。
また、実運用の前に社内関係者へきちんと共有し、ルールを決めておくことでよりスムーズに導入ができます。新たなルールは、一度決めたら終わりではありません。ペーパーレス化のツールやシステムの導入、実行や検証などを繰り返し行うことで改善し最適化できるので、導入後も適宜変更していく必要があります。

4-5.外部のコンサルティング・アウトソーシングサービスの活用もおすすめ

ここまで、経理業務のペーパーレス化の推進や導入の流れを紹介してきました。しかし、ペーパーレス化に関する課題によっては、自社でペーパーレス化のツールやシステムを導入する以外の解決策が有効な場合があります。
ですが、具体的にどの部分を改善していくか、通常業務と並行して原因を探っていくのは難しいと感じる方が多いと思います。そんな時は、専門的な知識を持ったコンサルティングを活用する方法を検討するのもよいでしょう。ノウハウや実績のあるサービスを利用すれば、ペーパーレス化にかかるコストや労力を最低限に抑えることも可能です。ペーパーレス化の目的を明確にしたら、ツールやシステムの導入と並行してコンサルティングサービスへの相談も検討してみましょう。

5.メリービズで経理業務のペーパーレス化に成功した事例

ここからは、経理業務のペーパーレス化に成功した事例をいくつか紹介します。

5-1.株式会社アーバンスペース様

レガシーな業務フローが効率化・テレワークの導入の障壁に──紙中心からクラウド化へ、メリービズと伴走した経理DX事例

<導入効果>
・紙ベースの起票や伝票管理などの業務がなくなり、すべてクラウド上で完結
・月次に関わる業務工数の大幅削減に成功。週3日のテレワークも実現
・売上・費用をタイムリーに把握することが可能に。銀行からの評価もアップ

5-2.株式会社I-ne様

経費精算業務の作業時間が「20時間から1時間に」──改善のきっかけは『バーチャル経理アシスタント』

<導入効果>
・経費精算関連の業務時間量が20分の1へ
・高い付加価値を生むバックオフィス部門の実現に向け、回り始めた「改善のサイクル」

経理業務のペーパーレス化についてまとめ

経理業務のペーパーレス化は、電子帳簿保存法改正や業務の効率化で注目を集めた課題です。しっかりと対応すべき問題ですが、導入や運用にコストがかかる場合もあり、業務フローが定着するまでに想定以上の時間がかかることもあります。自社でペーパーレス化を検討する場合は、ペーパーレス化の目的を明確にし、全社で共有したうえで利用するシステムを選ぶ必要があります。

通常業務をこなしながらのペーパーレス化の対応が難しい場合は、専門的な知識と実績を持つ経理のコンサルティングサービスの活用もおすすめです。コンサルティングサービスである『メリービズ経理DX』では、ペーパーレス化の支援だけではなく、その後の運用までお客様に合わせた必要十分なサポートを行います導入後の安定化までご支援が可能ですので、ぜひ検討してみてください。

 

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