メリービズ流・経理キャリア研究 ~経理にはどんなキャリアプランがある?幅を広げるおすすめ資格も紹介~
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キャリアプランとは、将来自分がどのようになりたいかを設計した上で、実現に向けて行動する計画のことです。経理に携わっている人にはどのようなキャリアプランがあるか、具体的に例を挙げて見ていきましょう。さらに、キャリアプランの幅を広げるためにおすすめの資格も紹介します。
1.経理の主な業務内容
まず基本のキとして、経理職の主な業務内容を確認していきましょう。経理は会社の事業活動によって発生する売上や費用、資産などを管理する、重要な役割を担う事務系職種です。事業活動を管理する単位期間によって、日常業務・月次業務・年次業務の3つに大きく分けて考えられます。それぞれ順番に見ていきましょう。
1-1.日常業務
経理がおこなう日常の業務には、以下のようなものがあります。
・現金や預金の管理
・経費精算
・会計ソフトへの入力
・請求書の受領や発行
・売掛金や買掛金の管理
主に、会計ソフトへの入力や各種書類の発行・管理など、日常的な売上や費用などの発生にともなう業務が該当します。経理は企業の資源を日々管理する、重要なポジションといえるでしょう。
1-2.月次業務
経理が月次単位でおこなう業務には、以下のようなものがあります。
・取引先への請求および支払い
・給与計算
・在庫管理
・月次決算および月次試算表の作成
日常業務で管理している売掛金の請求や棚卸し業務、受領した請求に対する支払い、給与計算、月次決算の確定や月次試算表の作成などがあります。月次試算表とは月ごとの決算書とも言えるもので、企業の経営状況や財務状況を見える化するものです。1年に1度の決算業務の負担を軽減するほか、銀行の融資に活用したり経営者の判断を助けるなど、重要な場面で使われるものになるでしょう。
1-3.年次業務
経理が年次単位でおこなう業務には、以下のようなものがあります。
・年次決算
・年末調整
経理が1年でもっとも忙しく、神経を使い、完成後のやりがいも大きいのが、この年次業務かもしれませんね。月次決算では確定できなかった未処理の勘定を整理したり、棚卸在庫と残高の確認および確定などをおこない、1年間の企業活動の記録を確定させたうえで財務諸表を作成し、税の計算および申告・納税までをおこないます。企業活動が多いほど業務は膨大になり細部にわたりますが、正確な月次決算を積み重ねておけばその負担も分散することができるはずです。
※ここでは、上場企業においては必須となっている四半期決算は割愛し、日常・月次・年次の単位でご紹介しました。
2.経理業務に向いている人の特徴
経理業務について日ごと、月ごと、年ごとで見ていきましたが、数多くの業務を担当する経理には、どのような人が向いているのでしょうか。代表的な要素は以下の通りです。
・数字に強い人
・細かい業務を正確にやりきれる人
・ルーティン業務が苦にならない人
・新しい知識・情報を学ぶことが好きな人
順番に解説します。
2-1.数字に強い
経理にはもちろん数字を扱う業務が多いため、数字に強い、アレルギーがない人が向いているといえるでしょう。現在は表計算ソフトや会計システム・業務システムの普及により、計算を自動化できる部分も多くありますが、場合によっては電卓などでの手計算や確認作業が必要な場面も少なくありません。数字を見るのが苦手な人では、日々の業務に対してモチベーションが上がらないことも考えられるでしょう。数字の確認や計算をおこなうこと自体が苦にならない人が適任といえます。
2-2.細かい業務を正確にやりきれる
細かい業務を正確にやり切れる人も、経理業務に向いているといえるでしょう。経理は、数字入力ミスや記載ミスをしてしまった場合、企業を揺るがす大きな問題につながりかねない影響度の高い業務を担っています。そのため、数字の入力ミスがあればすぐに気づけるような、細かい業務を正確にやりきれる人が必要です。また経理の業務は締切が厳格に決まっている場合もあるため、納期に合わせて正確に業務をこなせる人が適任です。
2-3.反復業務が苦にならない
経理担当者は日々数字や文字を確認・入力し、間違いがないかチェックし、計算や辻褄が合わなければ原因を追求し、また数字や文字を入力するといった反復業務をおこないます。
そのためコツコツと作業をこなせる、類似した業務を精度高く反復できる人が向いているでしょう。また、入力・計算ミスなどの原因を追求する粘り強さや、仮説を立てて検証できる力もあるとより水準の高い仕事ができるでしょう。直接的に売上を獲得したり、対外的にPRしていく業務のような派手さはないかもしれません。しかし経理は従業員や企業を支える縁の下の力持ち的存在であり、重要な業務を繰り返し進められる粘り強さを持つ人が向いています。
2-4.新しい知識・情報を学ぶことが好き
新しい知識や情報を学ぶことが好きな人も、経理に向いているといえるでしょう。表計算ソフトだけではなくITツールやAI(人工知能)などの普及により、経理の仕事は近年大きく変化しています。AIやRPAが経理のルーティン業務を軽減してくれることが期待できるぶん、経理にはITリテラシーやデータを読み解く分析スキルが必要となっていくでしょう。また分析結果を周囲に的確に伝えるための資料作成力やプレゼンテーション能力なども必要です。経理の業務内容が変化していく中で新しい知識や情報を貪欲に学べ、さらに業務を効率化できる改善提案までおこなえる人材が、これからの経理に求められるでしょう。
3.目指すのは経理部長?CFO?それとも税理士? ~経理のキャリアプラン例を考察~
経理には、事業会社のなかで経理・会計・財務職としてのスキルや経験を積み重ねていくプランと、事業会社から出て専門職としてのキャリアを重ねていくプランの、大きく2つのキャリアの方向性があります。ひととおり経理業務を担当した後は、将来どのような仕事をしたいか想像し、キャリアプランを立てるのもいいかもしれません。
3-1.事業会社での経理・会計・財務職のプラン
事業会社において、経理・会計・財務の領域でスキルや経験を積んでいくキャリアです。主に、下記のようなものがあります。
・経理スペシャリスト
・経理部長・管理部長
・経営企画・FP&A
・CFO(最高財務責任者)
それぞれのキャリアプランについて、順番に見ていきましょう。
3-1-1.経理スペシャリスト
まず挙げられるのが、経理としての経験の幅や深さを追求していく、経理スペシャリストとしてのキャリアプランです。
経理職にあっても、企業におけるすべての経理業務、また給与計算や税務などの周辺業務をすべて経験している人はそう多くありません。そうした業務を広く経験し、経理として知らないことはない、という状況を目指していきます。
また、いわゆる経理業務のみならず、前述した新しい会計システム・業務システムの導入や利活用に精通したり、他社の取り組み事例を研究して自社に活かすなどの活動ができると、さらにスキルの幅が広がり有用な人材へとキャリアアップしていくことが可能となります。
3-1-2.経理部長・管理部長
担当者として経理業務を経験したのち、経理部長や管理部長を目指していくこともできます。
経理部長は、文字どおり経理部の最高責任者となる役職で、売上・費用・資産に関する業務を遂行する経理部門の責任者となり、経営層や他部門との協調や交渉などを先頭に立っておこなう役割です。管理部長は、人事部や総務部、経理部などの管理部全体を統括する部長を指します。財務・会計面のみならず、いわゆるヒト・モノ・カネ・データといった経営資源全体の管理・活用をおこなう役割です。
また、マネジメント職となることから、組織や部下の管理・育成も業務となってきます。社員が高くモチベーションを持ちながら仕事を遂行するために、部長が積極的に部下とコミュニケーションを取ったり、サポートをおこなっていく必要があるでしょう。
3-1-3.経営企画・FP&A
経理領域からの派生として、経営企画やFP&Aなどの職種も考えられます。
経営企画とは、自社のビジョンや戦略に基づいて中長期的な経営計画を立案し、その実行管理や経営層との意思疎通をおこなっていく仕事です。経理・会計領域の経験があれば、どれだけの事業成果・売上・利益を出したければ、どれだけの費用を投資し回収していかなければいけないか、数字で組み立て計画として形にする仕事に活かすことができるでしょう。
FP&Aは、Financial Planning & Analysisを略したものです。主に欧米圏で提唱されてきたポジションで、近年日本でも職種として確立されつつあります。文字どおり、企業の財務数値の分析・予算立案から実行、運用フォローなどを担当する仕事です。経営企画とほぼ同義に使われることもありますが、より財務モデリングや企業価値との連動性が意識されたポジションとして考えられています。日本でもこれからさらに重要視されていくでしょう。
3-1-4.CFO(最高財務責任者)
CFOも、経理職からキャリアアップして目指す職種として充分に考えられます。CFOはChief Financial Officerの略で、企業の最高財務責任者を指します。
企業の財務・会計などのお金に関わる全てを統括する、CEOを支える経営陣の一人として重要な役割を担っている職種です。ほかの経営陣とともに経営戦略を企画・検討したり、財務を基盤にした資金調達や投資からその戦略実現を推進していく役割を担います。財務・会計に関する知識や経験だけでなく、市場動向への知識やネットワーク、経営企画能力、金融機関や投資家との交渉能力なども持ち合わせなければなりません。責任やストレスも大きい一方、企業経営に携わり推進していくやりがいも大きい職種です。
3-2.専門職としてのプラン
こちらは事業会社内のキャリアと打って変わって、社外の専門家として独立性の高いポジションから企業の経理・会計に携わっていく専門家としてのキャリアをご紹介します。
・税理士
・公認会計士
・財務・会計コンサルタント
・フリーランス
順番に解説します。
3-2-1.税理士
税理士とは税に関する専門家として、税務の代理や、納税義務者の税務相談に応じる職業です。国家資格である士業であり、専門性を活かして顧客の業務代行や発展に寄与できる職業です。
税理士になるには、基本的に税理士試験に合格した後2年以上の実務経験を持つことなどの条件が必要となり、決して簡単につける職業ではありません。経理職での経験を活かし、税務面での専門性を高めて企業や個人へ貢献していきたい、税制の適正な実現の一端を担っていきたい、という方にはおすすめのキャリアプランです。
3-2-2.公認会計士
公認会計士は、監査および会計の専門家です。独立した立場から企業が作成した財務諸表への監査をおこなう、また税理士登録をしたうえでの税務業務や、会計・経営コンサルティングにより、企業の支援や健全な経済社会の発展に寄与していく職業です。
公認会計士の職に就くのも、決して平坦な道のりではありません。相当な勉強量をこなして試験に合格し、3年以上の実務経験などを積んだのち、公認会計士協会の名簿に登録されることで、ようやく公認会計士になれるのです。上場企業の増加などにともない、ますます活躍の幅が広がっており、注目のキャリアプランです。
3-2-3.財務・会計コンサルタント
財務・会計コンサルタントは、顧客企業に対して財務・会計を起点にした経営コンサルティングをおこなう職業です。財務面からは、企業活動にあわせた資金調達や投資の戦略立案や実行支援、M&Aに関するアドバイスなどを、会計面からは、財務諸表をベースにした経営改善や会計に関係する法規制の動向モニタリング、対応サポートなどをおこないます。
経理の業務経験を活かして、財務・会計の幅広い知識を身に着けたうえで企業支援をおこなう、責任の大きな仕事です。財務・会計に特化したコンサルティングファームも増えており、採用されればアソシエイトから経験を積みキャリアアップをさらに目指すことが可能です。
3-2-4.フリーランス
近年、事業会社での経理経験を活かしてフリーランスとして独立し、複数の企業の経理業務を担ったりアドバイスしたりする人が増えています。税理士や公認会計士といった資格取得の必要はなく、自らの業務経験をダイレクトに活かして仕事ができます。とくに、在籍したことのある業界・業種や、利用に精通した会計システム・業務システムを活かせる仕事においては、その経験が重宝されます。
独立して仕事をするぶん仕事の獲得や発注元との関係構築は自らおこなう必要があり、企業に所属している安定感はそのままとはいきませんが、自らのキャリアや経験を活かしてキャリアップしたい、時間や場所の自由度高く仕事をしたい、という方にはぴったりのキャリアプランと言えるでしょう。
4.経理のキャリアプランの幅を広げるおすすめ資格
この章では、キャリアプランの幅を広げるためにおすすめの資格として、具体的に4つご紹介します。税理士・公認会計士はいずれも難易度の高い国家資格で、年単位の専門的な勉強が必要ですが、簿記やFASSは日常的な経理業務にとても関連性の高い内容となっており、経理職の人ならどなたでも受検したり内容を知っておくだけでも意義深いものとなるでしょう。
・日商簿記検定
・FASS検定(経理・財務スキル検定)
・税理士
・公認会計士・USCPA(米国公認会計士)
上記のほか、その他の資格についても紹介しています。順番に見ていきましょう。
4-1.日商簿記検定
日商簿記検定は、経理業務に必要な商業簿記の知識をはかる資格試験です。比較的身近な学習量でも対応できる3級から、合格率が約10%と難関の1級まで存在します。経理職であれば2級以上を評価対象としている企業も多いため、簿記の資格取得を目指すのであれば、まず2級を目標としてみるのがよいでしょう。
4-2.FASS検定(経理・財務スキル検定)
FASS検定とは、経済産業省の経理・財務部門の人材育成事業によって始まった検定です。
変化していく会計基準や規則等に対応した最新の実務能力をしっかりと身につけられているかどうかを判断するための試験で、税務申告業務や連結決算など、実務的な知識が問われます。FASS検定を取っておけば、実務経験がない場合でも実務経験に匹敵するような知識量があると証明できるため、経理のキャリアプランの幅を広げてくれる資格でしょう。
4-3.税理士
税理士の試験は、会計2科目と税法3科目の合計5科目に合格しなければなりません。税理士試験は科目合格制となっており、一気に5科目を受験・合格する必要はなく、1科目ずつ受験してもよいことになっており、合格科目は生涯有効です。会計科目は誰でも受験可能なため、税理士を目指さなくても、知識の獲得やスキルアップのため受験する人もいます。
4-4.公認会計士・USCPA(米国公認会計士)
公認会計士試験は、短答式試験(4科目、年2回実施)と論文式試験(5科目、年1回実施)により構成されています。いずれも合格し、3年以上の実務経験等を経ると、公認会計士としての活動ができるようになります。また、米国各州が認定する公認会計士資格であるUSCPAもあり、 国際的なビジネス資格においては最高峰と位置づけられています。USCPAはグローバルな会計知識を証明できるため、海外進出している企業と仕事をする場合は特に評価されやすいでしょう。
4-5.その他の資格
上記だけではなく、IFRS検定(国際会計基準検定)もキャリアプランの幅が広がる資格です。
IFRS検定とは、国際会計基準審議会が定めている会計基準の知識や理解力を測る試験です。合格率の高い年は80%と、きちんと準備をして臨めば比較的合格しやすい資格といえるでしょう。
経理のキャリアプランについてまとめ
今回は経理のキャリアプランについてまとめました。経理の業務内容は多岐に渡りますが、企業活動を支える大きな責任とやりがいも感じられる職種です。
事業会社での経理職だけでも様々な可能性があり、社外に出てより専門的なキャリアを積んでいく方法もあります。ぜひ、現在の仕事・業務と向き合うことだけでなく、スキルアップ・キャリアアップについても積極的にとらえてみてくださいね。
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