経理業務のクラウド化とは?メリット・デメリットからサービス導入手順まで詳しく解説
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経理業務のクラウド化とはどのようなものなのでしょうか。クラウド化が進む背景と共に見ていきましょう。
1.経理業務のクラウド化とは
クラウド化とは、PCにインストールして活用するのではなく、インターネットでアクセス可能な環境でサービスを活用することを指します。従来、社内に設置されていたシステムやサーバーをクラウドサービスに移行することで、柔軟性、スケーラビリティ、コスト効率の面で多くの利点がもたらされます。経理業務をクラウド化すれば、インターネットに接続することですぐに活用でき、時間や場所を選ばず効率的に業務を行うことが可能です。
1-1.経理業務のクラウド化が進む背景
経理業務のクラウド化が進む背景の一つに、政府の方針があります。持続的に経済成長をしていくため、政府は広くクラウドサービスの利用を推進してきました。2018年、政府は「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」を発表しています。
この方針において、クラウドサービスの利用を第一候補とする「クラウド・バイ・デフォルト原則」が示されました。これにより、会社のPCに会計ソフトをインストールして、手作業で請求書や納品書、領収書、預金通帳などのデータを処理することは推奨されなくなりました。入力作業に時間がかかったり、ミスが発生しやすかったりする課題をクラウド化で解決する指針が示されたとも言えるでしょう
またクラウドサービスを利用すれば権限を付与された複数の担当者が情報を閲覧できるため、資料を共有する際、メールに添付して送るなどの手間もかかりません。スムーズな情報共有により業務の推進にスピード感が生まれるなど、多くのメリットを生み出しています。
2.経理業務をクラウド化するメリット
2-1.銀行口座やクレジットカードと自動連携できる
経理業務をクラウド化するメリットとして挙げられるのは、クラウド会計ソフトと銀行口座・クレジットカードが自動連携できる点です。
従来の、PCにソフトをインストールするタイプの会計ソフトでは、通帳や請求書を手元に置き、日付や勘定項目、金額といった項目を一つひとつ手作業で入力する必要がありました。しかしクラウドサービスで自動連携が完了すれば、銀行やクレジットカードの取引情報を取得し、自動で取り込んで仕訳を登録していくことが可能です。
これにより記帳業務が大幅に効率化されるため、締め日に入力作業に追われることも少なくなるでしょう。また、従来の方法ではPCと領収書を見比べて入力するのでミスが起きやすい状況になりがちですが、クラウド化によって入出金や支払い履歴が自動で取り込まれるようになれば、その手間も減り、人的ミスを減らすことができます。
クラウドサービスには学習機能も付随しているため、勘定項目を指定しておけば作業がより楽になり、ほかの業務に時間を割けるようになります。
2-2.会計情報を一元管理しやすい
経理業務をクラウド化することで得られる2つ目のメリットは、会計情報を一元管理しやすい点です。クラウド型会計ソフトでは、サーバーにデータを置いて管理しているため、複数の担当者や管理者がいつどこにいても好きなタイミングでデータを確認することができます。
従来の方法では、資料の提出を求められたら、プリントアウトして持っていったり、メールに添付して送ったりしていましたが、その必要はなくなります。経理部門だけではなく経営者もすぐにデータを閲覧できるので、会計情報を経営判断に役立てやすくなります。また、税理士もサービスを使えるようにしておけば、データの確認をリアルタイムで行えるので、意思疎通もスムーズとなるでしょう。
2-3.場所やデバイスを問わず業務が可能になる
経理業務をクラウド化することで、インターネットがあれば場所やデバイスを問わず経理業務が可能になる点もメリットです。
従来のインストール型会計ソフトでは、ソフトがインストールされているPCからしか業務が行えませんでした。そのため、在宅業務などのリモート環境では仕事ができず、担当者が出社する必要がありました。クラウド型の会計ソフトを利用すれば、自宅や出張先からでも業務が可能となり、社長業や現場での業務、経理業務を兼任することもある中小企業の社長にとっては有益でしょう。また、経理担当者が自宅から業務を行ったり、外部委託したりする場合も、手間がかかりにくいです。
デバイスについても、PCだけでなくスマートフォンやタブレットなどからでも業務が行える場合もあります。場所やデバイスを問わず経理業務をおこなえることでテレワークの推進にもつながり、スムーズに事業を推進することにつながるでしょう。
2-4.経営数値をリアルタイムに確認・共有できる
経理業務をクラウド化することで、経営数値をリアルタイムに確認できるメリットもあります。
経営者は世界情勢や自然災害、経済情勢の変化など会社や事業を取り巻く環境にうまく会社を適応させていくため、重要な経営判断を迫られます。経営者が迅速に判断するには、必要なときに最新の経営数値を把握することが望ましいでしょう。しかし、従来のやり方では経理担当者がデータを取りまとめてから紙などに印刷していたので、タイムラグが生まれていました。
会計ソフトをクラウド型のものに切り替えることで、経理担当者を介さず、ログインするだけでリアルタイムに経営数値を確認できるようになります。迅速にデータを確認できるクラウドサービスは、スピーディな経営判断に欠かせないものとなるでしょう。
3.経理業務をクラウド化するデメリット
クラウド化のメリットを紹介してきましたが、ここでは経理業務のクラウド化のデメリットを2つご紹介します。
3-1.業務を行う場合はインターネット環境が必要
経理業務をクラウド化するメリットは多いですが、デメリットを挙げるとすれば、業務を行う際にインターネット環境が必要な点です。
クラウドサービスはインターネットに接続した状態でないと使用できないため、場所によっては業務が行えない可能性があります。また、インターネットの接続環境が悪い場所での業務に不便を感じたり、突然の通信障害や停電で全く作業できなくなったりする可能性があります。
導入時は、社内や自宅などのインターネット環境を整備しておくことを推奨します。
3-2.ランニングコストがかかる
クラウドサービスは、導入時にコストがかからない分、毎月定額のランニングコストが発生します。今までソフト導入時の初期費用のみで済んでいた費用が毎月かかるようになると、長期的に見てどちらがコストメリットがあるか、判断がつきにくい場合もあるかもしれません。
しかし、クラウドサービスではインストール型会計ソフトのように、最新のバージョンにするために新しいソフトを購入する必要がありません。コストが毎月かかることを考慮しても、最新バージョンのインストールやアップデートの手間が軽減されることは大きなメリットと言えるでしょう。
4.経理業務をクラウド化しても実現できないこと
経理業務をクラウド化することで主に業務の効率化の面において多くのメリットがありますが、クラウド化には限界があることも事実です。導入する前に、以下の2点についてきちんと把握しておくことは大切です。
4-1.現金払いの領収書は自動取り込みできないシステムが多い
クラウド会計ソフトを利用すれば、クレジットカードや交通IC系カード、ネットバンキングなどの利用明細を自動で取り込むことが可能ですが、現金払いの領収書は未だ多くのシステムで自動取り込みができないのが現状です。経理担当者による手作業での入力となるため、現金払いが多い会社ではメリットを享受できない場合があるでしょう。
一方、会計ソフトによっては、現金払いの領収書の写真を撮影して読み込ませることで、データ化することが可能になってきています。入力作業が大幅に効率化され、手間が減らせますので、自動判別(OCRを用いられていることが多いです)システムがあれば、ぜひ活用してみてください。
4-2.全業務を自動化できるわけではない
業務の効率化が期待できるクラウド化ですが、すべての業務を自動化できるわけではありません。前述の通り、現金払いの領収書は手入力する場合が多く、領収書を読み込む機能がついているソフトを使っている場合でも、写真の取り込みに不備がないか確認する必要があります。不明点があれば、領収書を提出した社員に連絡を取り確認する作業も発生します。
このように、最終的な確認作業は人の手が介在することが多く、手間がゼロになることはない点も覚えておきましょう。ただしクラウド化によって手作業での入力業務などは減るため、確認に時間を割ける場合もあります。一部の作業は自動化できませんが、全体の業務負担は軽くなることが期待できるでしょう。
5.経理業務のクラウドサービスを選ぶ際のポイント
経理業務のクラウドサービスを選ぶ際、参考にするべきポイントを5つ解説します。
5-1.自社で利用している銀行口座・クレジットカードとの互換性
経理業務をクラウド化することで挙げられるメリットに銀行口座やクレジットカードとの自動連携を挙げましたが、連携がうまく機能しなければ、結局提出されたデータを手作業で打ち込むことになり、クラウド化するメリットが失われてしまいます。導入を検討しているシステムが、自社で利用している銀行口座やクレジットカードと互換性があるかを事前にしっかり確認しましょう。ほかにも交通系ICカードやPOSなど、自社で既に利用しているシステムとの互換性も確認することで、手作業の範囲を減らすことができ、業務効率化に繋がります。
5-2.自社の経理業務に必要な機能が備わっているか
サービスや契約内容によっては、請求書作成や見積書の利用には追加料金がかかってしまう場合もあります。必ず利用機能を確認し、自社の経理業務に必要な機能が備わっているか確認しましょう。
たとえば、毎月の請求書を作成するための機能に追加料金がかかることを知らないまま、そのシステムを導入してしまった場合、当初見込んでいたランニングコストが想定より高くなってしまいます。他にも、社内規定に沿った経費の申請・承認フローに対応できず、申請・承認作業は結局書類で運用せざるを得ないなどといったケースも考えられます。自社で使う際にどんな機能が必要なのか確認し、必要なものを選びましょう。
5-3.ストレスなく操作できるか
経理業務をクラウド化するにあたってシステムの機能はもちろん、操作性なども確認しておきましょう。実際にそのシステムを使う担当者がスムーズに作業できることが重要です。システムのトライアル期間中にいろいろな操作を試してみて、ストレスなく利用できるか確認しておきましょう。
5-4.サポートが充実しているか
経理業務のクラウドサービスを選ぶ際、サポートが充実しているかも重要です。特に導入直後は、システムの使い方や操作方法などに疑問を感じることも多いため、サポートが必要になる場合もあります。コミュニケーションツールが複数用意されているか、レスポンスの速さ、専任の担当者がつくか、24時間対応かといった違いで利便性が変わってきます。システムによっては無料サポート期間の後、有料となるところもありますので、導入を決定する前にサポート期間や体制についても確認しておきましょう。
6.経理業務のクラウドサービスを導入する手順
経理業務のクラウド化を目指しサービスを導入するために、どのような手順を踏めばいいのか簡単に解説します。
6-1.インターネット環境を整備する
クラウドサービスを導入する前に、インターネット環境を整備しましょう。デメリットでも述べましたが、クラウドサービスはインターネット環境のない場所では利用できません。もしご自宅でも業務を行う場合は、自宅のインターネット環境も整えましょう。また、PCにセキュリティ対策ソフトを入れておくことも重要です。サーバーは強固なセキュリティで守られてはいますが、PCから第三者に侵入されてしまえば情報漏洩に繋がる危険があります。ネット環境とPC環境の整備は、サービス導入前に必須の準備です。
6-2.関係者のアカウントを作成し、アクセス権限を付与する
インターネット環境の整備が完了したら、経理にかかわるすべての人のアカウントを作成します。経理業務のクラウドサービスでは、複数人のアカウント作成が可能です。
また、それぞれのアカウントに対して権限範囲を設定できるため、役員にはフルアクセス権限を、経理担当者はそれぞれの担当業務で使用する範囲の権限を付与するなど、業務内容に応じて必要な権限を付与しましょう。
6-3.金融機関やクレジットカード情報を登録・連携する
アカウントの作成とアクセス権限の付与が終わったら、最後に金融機関やクレジットカード情報の登録と連携をおこないます。
連携には金融機関やクレジットカードのIDやパスワードが必要です。クラウド化に伴ってインターネット上でIDとパスワードを入力することに不安を覚える方も多いようですが、これらの情報はクラウド会計ソフトのサーバーで暗号化して保管されます。サービスを使用するPCのセキュリティも万全にして、情報漏洩などのリスクを回避しましょう。
7.経理業務のクラウド化にお困りの際、メリービズ経理DXでのご支援もご検討ください
経理業務のクラウド化は業務効率の向上が図れますが、自社で進めるのは意外と大変と感じた方も多いのではないでしょうか。
特に、経営数値の確認で気をつけたいのが、クラウドサービス導入前のデータを取得するには決算業務の移管が必要である点です。また、クラウドサービスのサポートは現場でのサポートがメインではないため、手薄になってしまう可能性がある点は注意すべき問題でしょう。
コンサルティングサービスである『メリービス経理DX』では、お客様に合わせて必要十分なサポートを行いながら、クラウド化実現に向けて伴走します。クラウドサービスの導入はもちろん、その後の運用に至るまでご支援可能ですので、ぜひ検討してみてください。
まとめ
経理業務のクラウド化によって、場所や時間を問わずどこでも働くことができる他、金融機関やクレジットカードとの連携ができたり、会計情報を一元管理が可能になることで、業務の効率化に繋がります。
ただしクラウドサービスの導入はインターネット環境の開設からアカウント開設、各種銀行との連携業務など意外とやることが多く、普段の業務と並行しながら社内で全てを対応できるか不安を感じる場合もあるでしょう。
クラウドサービスの導入を検討しているが、導入までの手間に懸念を感じて見送ったことがある場合は、ぜひメリービズにご相談ください。『メリービス経理DX』であれば、クラウド会計導入から運用の安定化、そのほか現在抱えている経理課題全てに対応できます。コア業務に集中してより生産性を高めるため、ぜひ検討してみてください。
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