経理人材が不足する原因とは?人手不足を解消する方法もご紹介

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経理は企業にとってなくてはならない存在です。しかし、会社の売上や利益に直結する部門ではないと考えられてしまうことも多く、一般に人員を最小限にとどめようとする傾向があります。専門的な知識やスキルが求められる職種なので異動による人員補充が難しいこともあり、膨大な業務量を少人数で遂行せざるを得ない状況も発生しがちです。ここでは、経理人材が不足する原因を詳しく解説するとともに、慢性的な人手不足を解消する方法もご紹介します。

1.コロナ禍以降の経理人材の求人傾向

経理・会計の職種においては、業務過多や人手不足が慢性的に叫ばれ、経理人材の不足がよく指摘されています。また、急速なデジタル化・DXの進行やコロナ禍でのリモートワークの定着などにより、経理部門の働き方や求められるスキルは大きく変化しました。会計ソフトや請求管理・経費精算などのデジタルツールの普及によって紙の管理や単純作業に追われる時間は減少傾向にある一方、ツールの導入にともなう経理業務プロセスの改善・変更や、新たなツールの情報収集や導入是非の検討、経営分析や経営計画についての企画・管理、多くの部門を巻き込んだ業務改革などの企画業務が増加しています。

参考)経理の有効求人倍率は?

「人材不足」を考えると真っ先に浮かぶのが有効求人倍率ですよね。毎月、厚生労働省が発表しているデータを報道などで目にしている人も多いかもしれませんが、実は経理の有効求人倍率はあまり高くありません(有効求人倍率 = 有効求人数 ÷ 有効求職者数 なので、求人数が多く有効求人倍率が高いほど、企業にとっては求職者を獲得しづらく人材が不足している状況と言えます)。2023年5月に発表されたデータによると、全国平均の有効求人倍率は1.32倍、一方経理職が中心と考えられる「会計事務従事者」の有効求人倍率は0.62倍となっています。経理の有効求人倍率は相対的に低いのに、経理不足に悩む企業が多いという現象が起きているのです。この背景には、前述のとおり人員を最小限にしようとする傾向から求人として外部に出されていない、などが考えられます。

2.経理人材が不足している原因

経理業務は、請求書発行・仕訳入力などの月次業務から、年末調整や決算業務まで多岐にわたります。業種業界問わず企業活動には欠かせない業務ばかりですが、多くの経理部門は深刻な人手不足に悩まされています。そもそもなぜ経理人材は不足する傾向にあるのか、ここではその原因を細かく見ていきます。

2-1.日本の労働者人口が減少している

大きな原因の一つとして、日本の労働者人口の減少が挙げられます。総務省のまとめによると、少子高齢化により15歳から64歳までの生産年齢人口は、1995年の8,716万人をピークに減少を続けています。2015年では7,629万人と、20年間で大幅に落ち込んでいます。2060年には2.5人に1人は高齢者になる見込みで、出生率も年々減少傾向にあるため、労働者人口の減少はますます加速していくでしょう。社会全体の労働者不足が、経理の人手不足にも影響しているのです。

我が国の(日本の)人口の推移


https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc135230.html

2-2.経理人材の採用優先度が低い

社会全体で人手が不足しているなか、多くの企業では収益に直結する部門の人手不足解消が優先されがちです。経理は売上・利益に直結しないとみなされてしまうことも多く、人員を最小限にする傾向があります。また、経理業務には専門的な知識やスキルが求められ、求めているレベルの人材を確保できないケースも少なくありません。結果として採用が後回しになり、経理部門は慢性的な人手不足に陥ることになるのです。

2-3.専門知識を持つ人材の確保が難しい

企業のお金を管理する経理業務には高度な専門知識が求められ、伝票入力などのルーティン業務にも簿記の知識が必要です。また、法令や税法などの法改正にも対応しなければならず、最新情報を正しく理解する必要もあります。さらに、会計ソフトやクラウドサービスなどITツールを使いこなすことも重要で、ITスキルも欠かせません。このように、経理は幅広い分野について高度な知識をもって業務を遂行する専門職と言えます。そのため、いざ採用活動に注力してもなかなか適切な人材に巡り会うことができず、求めている人材を確保するのが難しいのが現状です。

2-4.育成方法の確立が難しく、キャリアアップしづらいことがある

経理人材のなかには、あらゆる業務の知識・経験を網羅しているわけではなく、特定の業務領域や分野に詳しい・経験を積んでいる、という人も多く見られます。ある企業の特定の経理ポジションでは活躍するものの、他社や他業務においてはそれを活かしづらいという状況も発生します。社会的には適材適所を実現することが難しく、人材不足を加速させる一因ともなっています。

しかしこれは、経理人材の育成や業務整備が容易でなく、人材開発やキャリアアップが難しいという実態が影響しています。締切や期日に追われがちな経理部門にあって、日次・月次業務を運営しながら人材育成に向けた取り組みの優先度を高めることは簡単でなく、そもそも経理人材のキャリアアップや育成そのものについての知識や情報の流通も不足しています。

事業部門と比べて少人数のチームとなりがちで、身近に目標となる人がいないケースも珍しくありません。その場合、自ら目標を設定して、自分で資格取得のための勉強をしたりスキルアップにつながる実務経験を積んでいったりするほかありませんが、自社の中でうまくロードマップを引いていけなくなると離職につながるなど、企業が経理担当を確保し継続的に育成していくのが難しい現状につながるのです。

3.経理人材の不足を解消する対策

経理の人手不足は企業にとって、様々な問題が生じる要因になりえます。十分なリソースを確保するにはどういった打ち手があるのでしょうか。ここでは、企業が人手不足を解消する対策や方法を解説します。

3-1.採用方法や勤務形態を見直す

コロナ禍以降、働き方の多様化が進んでいます。これは採用活動に関しても同じで、オンライン面接が主流になりつつあります。対面の採用活動では都市部の求職者のみが対象になりますが、オンラインで採用活動ができれば遠方にいる人材もターゲットに入れることができます。また、業務特性上フルリモートの導入が難しい企業も多い経理職ではあるものの、一部でもリモート勤務の環境を整えていくことで、その働きやすさを魅力のひとつとして求職者に提示していくことも一案です。

3-2.退職者を減らす工夫をする

新規採用が難しいのであれば、退職者を減らす工夫をすることも一案です。業務効率化による残業時間の削減は、経理担当の退職を防ぐことにつながります。業務内容のマニュアル化、デジタル化、アウトソーシングの活用など、その方法は様々です。また、経理職の社員に困っていることを聞く、日ごろの感謝を伝える、など基本的な行動を確実にとることも必要です。長く働き続けられる環境を作ったり業務の問題点を解消したりすることで、今いる担当者の負担を少しでも軽減して退職のリスクを減らしましょう。

3-3.デジタル化を推進して業務を効率化する

限られた人員で業務を回せるよう、デジタル化を進めて業務効率を上げるのも有効です。

社会的に経理のデジタル化は進んでいますが、いまだペーパーレスが進んでいない、ITツールを導入したものの使いこなせておらずかえって業務が複雑になっている、といった企業も少なくありません。会計システムをはじめとしたITツールの活用・リモートワークの推進は、業務環境の改善に役立ちます。例えば、書類をデジタル化することで、印刷などにかかっていた膨大な時間とコストを削減できます。クラウド化を進めて情報の透明性を上げることができれば、ブラックボックス化を防げるメリットもあります。

効率化によって捻出できた時間は、経営状況の可視化や経営の改善に向けた取り組みに充てるなど、少ない担当者でもコア業務に集中できる環境を作りましょう。

3-4.経理アウトソーシングを活用する

派遣社員の採用などで経理人員を確保することはできますが、求める水準ではない・教育に時間がかかる・指示出しに手間がかかるなど、様々な課題が生じがちです。そこで、経理に特化アウトソーシングを活用すれば、教育の手間をかけることなく人材不足を解消できます。

経理アウトソーシングとは、経理業務を専門性の高い外部のアウトソーシング会社に委託することです。自社で人員を確保するのが難しい場合、必要なタイミングで必要な分だけ人材を補填することができます。また、業務改善やデジタル化にも精通しているので、単に人手を確保するだけでなく業務改善を進めることも可能です。

経理アウトソーシングを活用することで、採用・教育にかかるコストを削減しつつ人手不足を解消できます。それだけでなく、属人化や不正の防止につながったり、プロの知識を借りつつ法改正への対応を進められたりします。

これからの経理は経営戦略などコア業務に集中できる環境作りが大切

経理業務には、専門知識や高度な処理能力が求められます。人手不足に悩む経理部は多いですが、労働人口の減少も相まって、求める水準の経理人材を確保するのは難しくなっています。デジタル化を推進すれば部門全体の業務効率を改善できますが、慢性的な人手不足や残業の定常化を解消するには経理アウトソーシングの活用も有効です。

人が足りない中で膨大な業務量をこなすのに精一杯で、コア業務に集中できない状況に陥っている企業も少なくありません。アウトソーシングを導入してノンコア業務を外注すれば、社内の担当者はコア業務に集中できるようになります。コア業務の一つに、経営数値の見える化や課題分析があります。経理は会社のお金を管理する部門です。その知見を活かして経営への提案ができるようになれば、担当者はやりがいを見つけることができたり、自身の市場価値を高めたりすることができます。担当者の成長だけでなく、企業が成長するためにも、経理部門がコア業務に集中できるようにすることは極めて重要です。

オンライン経理代行サービスを提供するメリービズでは、経理の専門知識を持ったスタッフがお客様のご状況に合わせた改善策の提案・推進をしています。「人手が足りない」「デジタル化を進めたい」など様々な経理現場のお悩みを解決し、コア業務に集中できる環境作りをサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。

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