開発者必見!イノベーションのジレンマ:革新的な製品が持つ宿命とは?

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大きく成長する会社は、創業間もない頃は自社の製品やサービスを気に入ってくれるコアなファンに向けて製品を届けます。 こうした会社のスタッフは、自社の製品やサービスを気に入って選んでくれた消費者が満足してくれるものを生み出すことに苦心しているのです。

それらはカラフルな靴ひもやアナログのレコード、ハンドメイドの筋力トレーニング用のボールなどといった非常にニッチな製品でしょう。もちろん、これらの製品はどんな人にも受け入れられる大衆向けの製品ではありません。こういった製品を見つけだして、買って、それを大切に長く使うためには、消費者の側もそれなりの労力を必要とします。しかし、個性的で尖った、革新的でかっこいい製品を好きこのむ人にとっては、この上ない製品なのです。

ところが、そんなニッチな製品を作っていた会社の多くはやがて尖った製品を作るのをやめて陳腐化した製品やサービスを生み出すようになります。製品やサービスを作る人たちは、自分たちが作っているものに苦心するあまり、効率よく製品やサービスを生み出すことに長けるようになり、そうして製品のデザインはよりシンプルなものになり、価格は安くなっていき、よりたくさんの人がその製品やサービスを利用するようになります。 その結果として、効率的に生産された製品が大量に市場に出回るようになるのです。

するとすぐに、その製品やサービスは、これまでその製品を愛用してこなかった多くの人たちが使うようになります。そういった人たちが求めているのは、単に簡単で機能的ですぐに手に入る安い製品なのです。

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これは、イノベーションがもたらされる過程で古くから見受けられる普及のかたちです。(これについて詳しくは こちらこちら、とこちらのリンクをご覧ください) マスマーケットに流通している製品やサービスは、イノベーションを起こす人やオタクたちにとってはあまりにも煩わしく、退屈なので、いるべくしてその市場でしか流通せざるを得ないのです。

いくつかその実例をご紹介しましょう。電子書籍は、当初ごくわずかの限られた人にだけ流通しました。なぜなら、電子書籍はその当時ダウンロードするのに手間がかかり、価格も高く、実際に電子書籍を購入して読むのには今よりかなりの手間がかかったのです。しかしやがて、電子書籍リーダーの価格が下がり、電子書籍化されたコンテンツの数も充実してくるにつれて、電子書籍はマスマーケットにより適した製品になったのです。

車が、かつてお金持ちと愛好家だけに限られたものからホンダのシヴィックのような誰もが日常で利用出来るファミリーカーとして流通した例もその一つです。 なにも自分用にカスタマイズして自分の愛好家としての所有欲を満たすためにシビックを購入するわけではないでしょう。 移動手段としてしかも低価格で利用できるものとしてシビックを買うのです。

最新のテクノロジーを駆使して始まった慈善事業も当初は、いくらかの博愛主義者の賛同を買って多額の資金を調達しますが、やがては陳腐化して皆の自尊心を満たすための道具に成り下がるのです。

手作りから始まったミュージシャンやバンドやそのレーベルが誰もが知っているような曲を作ってライブをするようになる過程もそうです。

もちろんアップルも古典的な例であると言えるでしょう。アップルの製品は、近年の華々しい成功とは比べ物にならないほど長い間、コンピューターの好みにうるさいごく一部のユーザーにしか売れませんでした。 そしてiPhoneは、それが携帯電話にうるさい一部のユーザーを満たすものとなったために携帯電話市場を塗り替えることとなったのです。

最近発表されたiPhone5は、ガジェット好きのオタクたちをがっかりさせましたが、それはアップルの思惑通りだったのです。アップルはこの商品を、オタクたちほど自分が使う携帯にこだわらない大多数の人たちをターゲットとしたのです。 彼らはiPhone5を、機能検証もされていない新機能満載の面白い携帯としてではなく、日常の使用に適した使える電話として位置づけたのです。

セス・ゴーディンが定義するイノベーションのジレンマとは?

でもここからが面白いのです。

初めの段階では、企業は製品やサービスにこだわる人たちに向けてこだわった製品を開発しました。

次の段階では、製品やサービスにこだわらない人に向けてこだわりのある人が製品を作ったのです。

そして第三のフェーズでは、これは回避するのが難しいことなのですが、会社が軌道に乗って成長するにつれて、さらにその会社が産業化していくために必ずしも自社の製品にこだわりのない人たちを採用してしまうということが起きるのです。 そして、製品にこだわりや愛着のないお客さんを相手にしているうちに、自社の製品にこだわりをもたない従業員もそれで満足してしまうのです。(ただし、しばらくの間だけですが。)

1986年のゼネラルモーターズの例をとってみましょう。 誰も残念なデザインを見直して、キャデラックのような車を作る人はいませんでした。車にこだわりのある人は、皆そのかわりにベンツを買ったのです。そして、こだわりを持たない人は車にこだわりを持つことはありませんでした。 それが手遅れになるまでです。

マスマーケットにおいては、製品のクオリティやデザインにとやかく言ってくるようなお客さんに出くわすことはないでしょう。彼らは、とやかく言うほどこだわりを持っていないのです。

とにかく忙しくて他にやることがたくさんあるようなお客さんに向けてこだわりの持ちようがなく、ありきたりの製品やサービスを作ることは多いに結構なことです。単に人気があるからという理由だけで人気があるような製品を作るのも多いに結構です。 気をつけなければならないのは、製品開発チームが、大衆に迎合するあまり、製品作りにこだわりを持たなくなる時です。そうなってしまえば、こだわりと情熱をもった新たな会社に市場を席巻されてしまうようになるでしょう。

いかがだったでしょうか?

製品開発者が新年と情熱をもって製品開発に取り組んで、それをストーリーとしてお客さんに伝えれば必ずコアなファンが生まれることでしょう。しかし、その製品が人気を博してシェアを拡大したあともその製品開発への情熱を絶えず燃やすことが出来るのでしょうか? 苦戦している日本の電気メーカーにも創業当時のものづくりの心をいつまでも忘れて欲しくないものです。

著者:セス・ゴーディン(Seth Godin)

アメリカの起業家であり作家。彼が立ち上げたSquidoo.comは米国でアクセス数トップ125位に数えられる。 マーケティングやリーダーシップに関する著作が多数。 著書:「紫の牛を売れ!」 「トライブ 新しい“組織”の未来形」 「パーミッション・マーケティング」

出典:The cycle of customers who care

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